研究課題/領域番号 |
18K01887
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
中見 真也 学習院大学, 付置研究所, 研究員 (30794797)
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研究分担者 |
圓丸 哲麻 麗澤大学, 経済学部, 准教授 (00636996)
大崎 恒次 専修大学, 商学部, 准教授 (70712678)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 循環 / 自立 / コミュニティ / 6次産業化 / 地場力(仕組み) / 価値共創 / CSV / サステナビリティ |
研究実績の概要 |
平成30年度においては、研究実績として、以下の5点を整理したことが挙げられる。 ①豊島が本来有している資源(モノ、コト)についての時系列分析、検証、②豊島住民とUターン者、Iターン者との関係性、③豊島住民による6次産業化への取り組み、課題、④豊島住民にとっての産業廃棄物事件の位置づけ、未来志向、⑤豊島住民と瀬戸内国際芸術祭との関わり。特に、①については、戦後から現在までを大きく3期(1期:戦後から高度経済成長、2期:産業廃棄物事件対応、3期:産業廃棄物事件に対する行政訴訟結審(1990年)後、2017年3月の原状回復、現在)に分け、政治、経済、文化の3つの視点を軸に、文化人類学的アプローチを用いて、先行研究レビューを実施。この①が今後の豊島再生化プロセスにおける「仕組み」部分を形成すると考えている。次に、②と③については、豊島は現在、高齢化比率が50%を超えており、過疎化が進行している。豊島連合自治会長へのヒアリングからも、豊島の未来を託せる30~40代の住民、Iターン者、Uターン者が経済的希望を持てるよう、①の分析を踏まえ、6次産業化をどのように実行していくかが重要である。中でも、Uターン者においては、「安定した仕事」、Iターン者においては、「住居(空き家)」問題が大きな社会問題になっている。この社会的課題を解決すべく、自治会、行政(小豆島土庄町)、地域企業が一体化し、Iターン者、Uターン者を一人でも多く呼び、定住率を高められるかが、地域再生化の鍵を握る。④、⑤については、産廃という負の遺産をいかにして未来志向として捉え、適切に外部へ情報発信出来るか、また、瀬戸内国際芸術祭という強力な「触媒」を用い、豊島本来の地場力(仕組み)にうまく活かせられるかが、地域再生化の鍵を握る。上記先行研究レビューを踏まえ、2019年度は、地域再生化プロセスの構造化モデルの策定、検証に注力する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、まず、豊島という島、住民を知り、豊島の本来持つ食を中心とした地場力を様々な角度から探索することが研究上の主目的であった。もう一つは、豊島と瀬戸内国際芸術祭との関わりを住民目線で知ることであった。上記2つの研究目的は、島民へのヒアリング、および、瀬戸内芸術祭の現場視察、及び参考資料の入手、読み込み等により、地域再生化における「食」と「アート」の関わりを十分理解できたと考えている。今年度の研究成果をベースに、2019年度は、地域再生化のための構造化モデルの構築、検証へと向かうことが出来るはずである。また、研究手法の新たな習得という面からは、2019年度夏に豊島で実施予定のワークショップにおいて利用予定の定性調査手法「ACOP」というアクションリサーチ手法を本研究メンバーが体得したことが成果として挙げられる。このACOPという現代アートを鑑賞する際の手法を本研究に参考に、豊島住民および観光客を対象とした「豊島本来の良さ、弱み」に関する純粋想起を抽出する、アクション・リサーチを用い、豊島の地域再生化、ブランド化を図る上でのベースとなるコア要因を導出したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、より豊島現地に入り込み、豊島連合3自治会(家浦、唐櫃、甲生)の幹部、及び住民の協力の下、定量調査(アンケート調査)、および、定性調査(ワークショップ、ACOP)を両立し、住民ファーストの豊島の再生化の姿を仮説検証していきたいと考えている。その際、豊島で行った再生化プロセスが、今後、他の地域における再生化プロセスに援用、一般化できるよう、構造化モデルの構築に注力したいと考えている。その際、鍵を握る5つの概念は、「価値共創」、「CSV」、「6次産業化」、「コミュニティ」、「触媒としてのアート」だと考えている。これら5つの概念と定量、定性調査の結果を踏まえ、論文化を進め、加えて、学会発表を秋に2回(日本商業学会関西部会:9月、日本商業学会全国研究報告会:12月)実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度12月にACOP研修のため、京都造形芸術大学に、研究分担者の麗澤大学経済学部圓丸准教授が1泊2日で出張したため。
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