研究実績の概要 |
本研究の研究対象である消費者間の経済的インタラクションとは,フリマアプリやオンライン・オークション,スキルシェアリング・サイトなどにおいて,消費者間でモノやサービスを売買する行為を指す。消費者が商品を購入して一時的に所有し,自ら使用したのち,二次流通市場で売却する行動はtemporary ownership (一時的所有)と定義される(Nissanoff, 2006)。一時的所有はBardhi and Eckhardt (2017)の提唱する「リキッド消費」の一形態と位置づけることができる。近年,製品を所有せずに必要な時に必要な量を利用する消費者行動や,消費者が住宅,自動車,スキルなどの余剰資源を他の消費者に提供し,その対価を得るといった行動が実務および学術の両方において注目を集めており、リキッド消費、アクセスベース消費、共同消費など様々な概念が生まれている。今年度はこうした新しい消費行動の先行研究を概観し,本報告の研究対象である一時的所有の理論的位置づけを試み,こうした行動に影響を与える諸要因と今後の研究機会について検討を行った。その成果は以下の研究成果として報告された。 山本晶「売ることを前提に買う人々:一時的所有と余剰資源の売却行動についての一考察」第61回消費者行動研究コンファレンス,2020年10月 また,フリマアプリなどの普及に伴い,一次流通の店頭でオンラインの二次流通市場の販売価格を調べて購入する,二次流通市場での売却を念頭に置いて一次流通で購入する,といった新しい消費者の購買行動が広がりつつある。今年度は二次流通市場における販売価格や成約までの日数といった条件が,一次流通市場の購買にどのような影響を及ぼすか検討した。その分析結果は以下の研究成果として公刊された。 山本晶「二次流通市場が一次流通市場における購買に及ぼす影響」『マーケティングジャーナル』 40(2),29-41,2020年9月
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