研究課題/領域番号 |
18K01890
|
研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
五十嵐 正毅 大東文化大学, 経営学部, 准教授 (40615358)
|
研究分担者 |
白井 康之 大東文化大学, 経営学部, 准教授 (20597512)
渡邊 直人 大東文化大学, 経営学部, 講師 (70434272)
国府 俊一郎 大東文化大学, 経営学部, 准教授 (90759721)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 広告効果 / 従業員 |
研究実績の概要 |
本研究は、組織が外部に向けて行う広告活動が従業員の意識や動機づけにどのような影響を与えるのか、そのメカニズムを明らかにすることを目的とし、3か年の研究期間を3段階のステップとして研究計画を策定した。 平成30年度はステップ1にあたる論理的仮説モデル構築の段階であった。交付申請時には、広告研究のCelsi and Gilly(2010)を起点に仮説モデルを構想していたが、HRM研究でしばしば取り扱われる概念をも含めて、モデル内で取り扱う概念群(変数群)を精査し、先行研究による理論的背景を踏まえた整理を経て仮説モデルの構築を行った。 変数群を精査する過程では、多種多様に語られてきた「エンゲージメント」概念の再規定や整理(例えば、従業員エンゲージメント概念とワークエンゲージメント概念など)と本研究への適用に向けた優先順位づけ、主要な概念を測定するための観測変数(質問紙調査における調査項目)の洗い出し、従業員の動機づけに関わる先行研究(例えば、デシらを中心とする一連の自己決定理論に基づいた動機づけ研究)の評価と議論、従業員満足や従業員の市民行動などについて、議論を行った。 そして、平成30年度内に、大学に在籍する大学生を対象としたプリテストを行い、モデル構築および本調査の準備に向けた示唆を得るに至った。プリテストで得られた示唆を受けて、現在は令和元年度に実施予定の本調査に向けた調査内容の改良に着手している。 また、ステップ2(特定組織を対象とした因果モデルの記述と検討)に向けた準備として、調査対象とするべき業種や企業に関わる情報収集と議論を経て、調査協力企業を獲得するために複数企業への協力依頼を働きかけている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は3か年計画のステップ1にあたる論理的仮説モデル構築の段階として、先行研究による理論的背景を踏まえた整理を行い、仮説モデルの構築を行った。 変数群の精査の過程では、多種多様に語られてきた「エンゲージメント」概念の再規定や整理(例えば、従業員エンゲージメント概念とワークエンゲージメント概念など)と本研究への適用に向けた評価と取捨選択、主要な概念を測定するための観測変数(質問紙調査における調査項目)の洗い出し、従業員の動機づけに関わる先行研究(例えば、デシらを中心とする一連の自己決定理論に基づく動機づけ研究)の評価と議論、従業員満足や従業員の市民行動などについて議論を行った。そして平成30年度内に、大学に所属する大学生を対象としたプリテストを行いモデル構築および調査票作成のための示唆を得るに至った。プリテストで得られた示唆を受けて、現在は令和元年度に実施する予定の調査に向けた改良作業を図っている。 プリテストを経た結果、モデルに採用するべき変数に関するさらなる知見が得られ、当初モデル(構想次元)から調査モデル(現実的な測定次元)へとモデルをブラッシュアップする手がかりを得ることができた。あわせて、調査実施に当たっての留意点についても学ぶことができた。現在は2度目のプリテストを経て、最終的な調査票の準備を進めるに至っている。 一方、調査協力企業を獲得するための複数の企業への協力依頼にも着手し継続的に活動している。企業経営や人事管理に関するデリケートな内部情報を提供してもらうことになるため、研究への協力を断られることもあったが、一定の関心を示してくれる企業もあり、引き続き協力依頼を行っている。 令和元年度のステップ2では、おおむね年度内の調査実施ができればよいと考えており、現在のところおおむね順調に進捗していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、3か年計画の2年目としてステップ2(特定組織を対象とした因果モデルの記述と検討)の推進を予定している。具体的には、年度内に特定組織を対象としたアンケート調査を行い調査結果の基本的な分析をまとめることを目標としている。 昨年度内に行ったプリテストからの示唆を受けた2度目のプリテスト(大学に在籍する大学生を対象)をすでに実施しており、アンケート調査の調査票作成と実施に向けた準備は着実に進捗している。 一方で、調査協力企業の獲得については平成30年度の終わり頃より継続して活動しており、可能であれば2社程度の企業の調査協力を得て調査の実施に進みたいと考えている。企業経営や人事管理の点でデリケートな内部情報を提供してもらうことになるため、調査協力を依頼した企業からは研究への協力を断られる例もあったが、引き続き別企業を選定して協力依頼を行っている。場合によっては、調査に協力してくれる企業の業種業態や個別事情などに考慮して柔軟に対応することも必要であると想定している。しかし、本研究で取り扱い検討してきている理論的基盤からは、現実の企業のさまざまな事情にも十分に対応できるものと想定している。 いずれにせよ、調査実施を令和元年度の後半に行うべく、準備の状態は順調であると考えている。 さらに、今年度の後半には、ステップ3(海外で活躍する日本企業へのモデルの応用)として研究を国際的な問題への対応へと展開するべく、台湾で現地従業員を雇用する日本企業への協力依頼を働きかけていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の研究使用額は当初の予定を大幅に下回り節約した活用ができた。 物品費については、主に先行研究の収集に充てる消耗品費(具体的には文献の購入や論文コピー、ILL取り寄せ等)などを想定していたが、近年のオープンアクセス環境の進展等により議論に十分なものを予想以上に少額で収集することができた。旅費については調査協力企業への訪問出張旅費(国内地方部・4人分)を見込んでいたが、平成30年度は都内での打合せに留めることができ出張の必要性がなかったため支出がなかった。その他支出であるが、プリテストの実施や研究協力企業の獲得等に充当することなどを想定していたがこちらも最低限の出費に留まった。 平成30年度に節約できた研究費については、令和元年度以後の調査に向けた協力企業との綿密な出張打合せや学会等での成果発表(いずれも国内地方または海外)の費用、研究上必要と見られる物品(主に文献資料等)の費用、調査におけるデータ収集と分析の費用を主に想定している。今後も研究費を効果的効率的に活用するべく工夫することを旨として、節約できた研究費はとくに調査分析の品質を高めることに優先順位を置いて活用したいと考えている。
|