研究課題/領域番号 |
18K01891
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
白井 康之 大東文化大学, 経営学部, 准教授 (20597512)
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研究分担者 |
後藤 裕介 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40454037)
森田 裕之 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (80295732)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HITSアルゴリズム / 固有ベクトル / エージェントベースシミュレーション / アンケート分析 / 顧客ロイヤルティ |
研究実績の概要 |
平成30年度においては,以下の3点に関する研究ならびに実証実験を行った. ・大学の「らしさ」の定量化分析:本分析では,提案書に記載した手法をベースに,都内の二大学におけるアンケート結果からそれぞれの大学の「学生らしさ」と「大学らしさ」の定量化に取り組んだ.それぞれの大学らしさは,2大学に共通する(いわば都内の有名私学としての)らしさと,それぞれの大学固有のらしさに線形分離可能であるとの前提に基づき,共通する特徴とそれぞれの大学固有の特徴に分解し,結果に対する考察を加えた.本分析では,一般的に語られている特徴を定性的に解析できたことのみならず,新しい発見もいくつかあり,これらに関する背景に関する考察も加えている. ・トラベルサイトのレビューに関する信頼性評価:一般に,信頼できるレビューワーのレビュースコアは信頼でき,信頼できるレビューワーと同様の評価を行うレビューワーは信頼できると考えられる.本手法では,こうした相互依存的な関係に基づき,レビューワーとレビュースコアの信頼性の解析を行った.また,これらの結果をもとにして,信頼できるレビューワーが高く評価するホテルが,その後のレビューにおいても高い値をとる傾向が高いことなど,将来のスコア予測においても有用な指標と成りうることを示した. ・エージェントベースシミュレーションによるスタッフ移動の効果分析:本分析では,都内近郊のヘアサロンにおける来店データをもとに,スタッフが店舗移動を行う場合の効果シミュレーションを行った.ヘアサロンのような業態においては,多くの顧客は店舗やチェーンのブランドよりもスタッフに対するロイヤルティを持っているため,こうしたロイヤルティがスタッフ移動に対してどのように経営上影響を与えるかは,きわめて重要なテーマである.本分析の結果として,それぞれの移動によるチェーン全体への売り上げへの影響を定量的に示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
企業データや新たに収集された実データを用いて,「らしさ」の定量化分析やシミュレーションを行うことで,単なる理論だけではなく,実際の効果に関する定量的分析を行うことができた.特に,従来の小売業の販売データだけでなく,アンケートデータやメディア接触データ,またスタッフロイヤルティへの応用を通じて,さまざまな業態へのアプローチが可能であることを具体的に示すことができた.来年度以降の研究においても,同様のデータを利用することが可能であると考えられ,シミュレーションの具体的なシナリオ検討に関して,今後の方向性も明確である.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に得られた結果や今後実施する新たなドメインでの検証結果を踏まえ,過去のトレンド変化への説明力を評価基準として,共進化過程モデルにおける商品ならびに顧客のパラメータを検討する.特に,単なるアイテム間の関係のみならず,各アイテムをそれが持つ特徴に分解することにより,より精緻な分析が可能になると考えられる.また,顧客についても同様に特徴に分解することで,「らしさ」の相互依存関係をより精緻に解析することが可能となる.以上の分析を踏まえ,2020年度以降に実施するモデル化において必要となる変数の抽出を行うとともに,事前分析として,実データへのフィッティングや実行結果に対するフィードバック,受け入れられている経験則との整合など諸側面から,モデルの妥当性の確認を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた計算用サーバについては,今年度分の研究においては別途学内研究予算で購入したPCで仕様上十分であることが判明したため,購入には至らなかった.次年度以降,データボリュームやデータ利用制約等を考慮の上,必要であれば購入を検討する.
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