研究課題/領域番号 |
18K01895
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
山田 昌孝 名古屋商科大学, 商学部, 教授 (20174740)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 近接マーケティング / 消費者専門知識力 / 新製品の採用と普及 / 解釈レベル理論 / スキーマ |
研究実績の概要 |
本年度は、前半の集中的な文献調査の結果から、近接マーケティング(Proximity Marketing=PMとする)に関する正面からの取組から離れて、通信の第5世代の進行と共に期待される消費者行動の変容を考慮した研究へと舵を切らざるを得なくなった。その理由は明快で、筆者の構想時点では、企業がPMをどのように使いそれに対して消費者がどのように行動するか、その詳細を実証的に研究することであった。しかし、Ghose(2017)に代表される「スマホで買ってしまう9つの理由」にこの分野は殆ど開拓されてしまったためである。 そこで、ISMSのMarketing Science Conference 2019では、PMの特徴である消費者の位置情報、つまり、場所と共にその時間情報を基に、さらにその消費者の情報も蓄積されていれば従来のマーケティング刺激より購買に繋げる確率が高いという仮説が立つ。解釈レベル理論を使ってその証拠を得るために公演のチケットをネットで購入する人々のチケット購買時点(3ヶ月程度前)、公演近傍時点、公演数か月後の3時点でチケット購入者に公演場所の近傍のカフェ、レストランなどのクーポン券の利用意図を比較した。心理的な近さと位置的時間的近さの重なるときPMの有効性を実証した。 その後再び構想を練り、消費者の専門知識力は種々の商品やサービスの利用を繰返すうちにそれぞれの利用スキーマを発達させる。そこで、携帯からスマホに進歩する過程をモバイルホンの第1世代専門知識力時代、通信技術が進歩し4GまでにPMが出現した時代を第2世代専門知識力時代、さらに5Gに突入した時代を第3世代専門知識力時代とする。それぞれの時代で購入意図を調査し、世代間の構造を共分散構造分析を用いて、1995年にインターネットによるネット市場の出現以来ここまで発達してきた流通市場でのモバイルエコシステムを解明したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は最も進歩の激しい分野の一つであるため、当初の思惑と成り行きに齟齬が出たためにやや遅れをきたしている。さらに通常は時間の取れる2~3月に思いもかけぬCOVID-19の発生があり、ZOOMシステムを使った遠隔教授に大きく力を割かれた。
具体的には、以下の2点を達成目標としている; 1.ローマ大会の結果の精査と論文化 2.日本市場におけるモバイルエコシステムの構造精査と論文化
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今後の研究の推進方策 |
1.ローマ大会の結果の精査と論文化 8月から10月をあてる。ここでは統計ソフトSAS 9.4を使用して主に順序ロジスティック回帰モデルを使って分析を進めていくので精査にはそれほどの時間は取らないと考えている。論文については、解釈レベル理論の枠組みを使って消費者が公演開催時期の近傍で活発にPMに反応することを実証しているという結果報告の論文に仕上げたいと考えている。 2.日本市場におけるモバイルエコシステムの構造精査と論文化 11月から翌年3月をあてる。構造方程式モデリングにはIBM SPSS AMOSを用いて分析をするが、現在は、測定変数と構成概念のあるモデルからスタートしたところ、適合性がよくかつ論理的に納得のできるものに到達したが構成概念変数なしの測定変数のみのものであるのでこの点を試行錯誤しながら構成概念変数の入ったモデルを探索的に探していきたいと考えている。この点で少々時間がかかることを予期している。 論文としては、流通論などで日米構造協議の結果、百貨店法⇒大店法⇒街づくり三法と構造的な変化を遂げてきた日本の市場構造が、1995年からインターネットの登場により仮想市場が新たに加わり、ネット通販が登場した。その延長上にモバイルエコシステムと呼ばれるような大きな市場構造が醸成されて来つつある。そこを消費者の専門知識力の発達過程を3期に分けて、その発達・進化過程の構造を明らかにしたいと考えている。個人のプライバシー問題と国家の国民サーベイランスやハッカー排除問題にも消費者個人の便益とリスクの観点から多少は触れられると考えている。楽天、アマゾンなどのネット通販業、銀行、証券、保険、さらに今回のCOVID-19禍による新規事業の発生が予測され、スマートシティ構想なども現実のものとなりつつある今、一大市場を構成していく中で意義のある研究となるように努めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度開催の第42回ISMS Marketing Science Conference at Duke Universityに参加するための旅費を2019年度の3月中に支払予定であったが、コロナウイルスの蔓延により、学会がオンラインとなることに決まったため、未使用となった。 また、2019年度に行った調査に加えて追加の調査を検討中であり、そのための費用として30万円の予算を組むこととし、次年度へ繰り越しをすることにした。 繰り越した予算は、追加調査の費用と、論文化に際の英文校正代として使用する予定である。 2020年度は、会議等はオンラインで開催されることが増えることが予想されるため、オンライン設備一式の購入費に充てることとする。
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