研究課題/領域番号 |
18K01896
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
李 東俊 名古屋商科大学, 商学部, 教授 (40585197)
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研究分担者 |
鈴木 浩孝 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (10554058)
成生 達彦 同志社大学, ビジネス研究科, 教授 (80148296)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Network Externalities / Fulfilled Expectation / Rational Expectation / Vertical Structure |
研究実績の概要 |
携帯電話をはじめとする情報関連財は、個々の消費者が財を消費するときに得られる効用が、 当該の財の属性のみならず、同種の財を利用している他の消費者の数にも依存していること が多い。このようなネットワ-ク効果が企業行動に及ぼす効果については経済学の分野で研究されてはいるが、そこでは主に生産者が消費者に財を直接販売する状況が想定されている。 しかしながら実際には、アップルやサムソンが生産した携帯電話機は、NTTドコモやソフト バンクなどの「携帯電話会社」を介して、差別化されたサ-ビスを付与した上で消費者に販 売されている。本研究では、生産者と流通業者から構成される流通チャネルを想定した上で、 経済学の分野で明らかとなったネットワ-ク財市場のメカニズムが垂直的な取引が行われる状況でも同様に成立するのか、あるいはどのように変更されるのかを明らかにする。 2018年度では、ネットワークの効果が存在する状況で既存の垂直統合と垂直分離に関するConventional Wisdomをいろんな方向で分析を行っている。Bonanno & vicker (1988)とRey & Stigliz (1995)によれば、戦略的な観点から川上企業(生産者)が内生的に垂直統合と垂直分離を決める状況で垂直分離が選ばれると主張している。しかし、ネットワークの効果が存在する状況でネットワ-ク効果による市場拡大効果が大きい状況では、垂直的統合時の方が、分離時と比べて、最終財価格が低く川上企業(生産者)の利潤は多いということが明らかになっている。このことは、統合に膨大な費用がかかるために分離を余儀なくされる状況でも、生産者は上限価格を制限する ことで多くの利潤を得ることを示唆している。そのため、本研究は概ね順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で既に述べた通り概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次の通りである。 投稿中の論文である”A Model of Vertical Structure with Network Externality”の論文を国内の日本商業学会(同志社大学、5月24日ー5月26日)と海外の46 Annual Conference of European Association for Research in Industrial Economics (Barcelona Graduate School of Economics, August 30-September 1)で口頭発表する予定である。 さらに、去年の研究の続きとして、生産者がネットワ-クの補完性の程度を設定し、流通業者が財(サ-ビス)の差別化の程度を設定するというような(異なる主体が消費者の効用に影響を及ぼす)状況が分析できるようにモデルを完成するつもりである。さらに生産者は、(閉鎖的チャネルではなく)開放的チャネル政策を採用することによって流通業者間の競争を激しくし、価格を引 き下げることも可能となる。この種の垂直的取引制限についても検討するつもりである。
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