研究課題
本研究の目的は、不確実性の高い市場環境に直面したマーケターが、いかに課題解決を行うのかを分析し、近年アントレプレナーシップ研究を中心に注目されている「エフェクチュエーション」(Sarasvathy 2001, 2008)の論理のマーケティング課題に対する適用可能性を明らかにすることにある。2021年度には、マーケティング実践におけるエフェクチュエーションの有効性について経験的調査を実施する予定であったが、コロナ禍の影響で再度調査設計の修正を余儀なくされることになった。ただし、それ以外の研究活動は着実に進めており、次のようないくつかの研究実績を残すことができた。第一に、大企業におけるエフェクチュエーションの活用に関するアクションリサーチを実施し、その結果を「オープンイノベーションによる事業機会の共創プロセス : 日本ユニシス株式会社関西支社の新規事業企画プログラム(KBP)を事例に」として『立命館経営学』紀要論文として発表した。第二に、既存企業の市場創造プロセスにおける適応可能性について、「中小企業の市場創造プロセスにおけるエフェクチュエーションの可能性」という論文で『商工金融』に寄稿した。第三に、理論的な検討にも継続して取り組んでおり、12月に開催された日本ベンチャー学会全国大会(大阪経済大学で開催)のショーケースセッションでは、エフェクチュエーションに関する過去20年間の研究潮流と今後の研究可能性について「企業家活動の成功の向こう側へ―エフェクチュエーション研究の現状と可能性―」という論題でレビューを行った内容を発表し、またその内容を論文としてまとめがものが、同学会誌『VENTUR REVIEW』に掲載された。提唱者であるヴァージニア大学ダーデンスクールのSaras Sarasvathy教授との連携も含めて、継続した研究の推進を行っている。
3: やや遅れている
過年度にも、新型コロナウイルスの影響により、予定していた対面での意思決定実験の実施を、研究協力者に求めることが困難となり、調査方法の見直しを迫られることとなった。データ収集の方法を個別に依頼する形の意思決定実験から、企業に協力依頼をしたうえで一定期間で集中的にデータ収集を行えるように調整を進めたが、新型コロナウイルスの感染拡大が長引いたことの影響により、予定していた研究協力機関から、現地での調査の協力が困難との連絡があり、実施 を次年度に延長することになった。ただし、予備調査としてのフィールドワークの成果は紀要論文としてまとめることができたほか、エフェクチュエーションに関する論考やレビュー論文も、複数の論文として発表を行った。
最終年度として、見直した調査計画の実施と成果発表を行う。価値創造のマーケティング実践におけるエフェクチュエーションの活用について、事例研究、意思決定実験のプロトコル分析、企業に対するサーベイ調査による分析結果を論文としてまとめ、国内外の学会で発表するほか、海外の査読雑誌への投稿を目指す。
新型コロナウイルスの影響により、予定していた研究協力機関から、現地での調査の協力が困難との連絡があり、年度内に事業を完了することが困難となったため、次年度に実施を延長させていただくこととなった。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Technovation
巻: 109 ページ: 102161
10.1016/j.technovation.2020.102161
商工金融
巻: 2022年02月号 ページ: 19-36
VENTURE REVIEW
巻: 39 ページ: 15-30
立命館経営学
巻: 60 (1) ページ: 131-156
10.34382/00014740