研究課題/領域番号 |
18K01906
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 史彦 東北大学, 経済学研究科, 教授 (10329691)
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研究分担者 |
榎本 正博 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 教授 (70313921)
山口 朋泰 東北学院大学, 経営学部, 准教授 (50613626)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外国人投資家 / 会計情報の質 / 利益マネジメント / コーポレートガバナンス |
研究実績の概要 |
本年度においては、昨年度に引き続き,外国人投資家と会計に関わる研究の包括的なサーベイを実施しつつ,分析データの選定と整備、関連研究を推進した。研究実績として,(1) 「日本版不動産信託における利益マネジメント―減価償却費の調整に注目して―」日本管理会計学会誌『管理会計学』28巻1号(木村),(2) Earnings management to achieve industry-average profitability in Japan,Asia-Pacific Journal of Accounting & Economics誌 (online publishing)(山口),(3) 「転換社債の発行と利益マネジメント」(東北学院大学経営学論集(14) 49-67)(山口)を刊行している.(1) は,日本版不動産信託の利益マネジメントの影響要因の解明に取り組んだ研究であるが,ここでは外国人投資家が利益マネジメントを促進(会計情報の質の低下)させる要素となっていることを見出した. (2)では企業が業界平均をベンチマークとした利益マネジメントの実施,さらに,(3)では転換社債発行時における利益マネジメントの状況について示した.会計情報の質を考察する上で,利益マネジメントは重要なファクターとなるが,これらの研究を通じて,利益マネジメントに関わるいくつかの特性を解明するとともに,特定の業態における利益マネジメントに対して外国人投資家が影響していることを明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究のサーベイを進める中で,研究で適用するデータベースを選定するために,各研究で適用されている外国人投資家に係るデータソースを調査した.主要なジャーナルに掲載された26篇の論文を検討した結果,ファクトセット・リサーチ・システムズ社のFactSetが国際的な評価,適用可能性の観点から最も適切であるとの結論に達し,調達することとした.COVID-19の感染拡大により,2020年3月の調達予定が遅れているが,5月には調達できる見通しである. また,同時並行で,分析にあたっての仮説を導出するための外国人投資家と企業の関わりについての法学的,経済的な背景を検討した.その結果,外国人投資家は(投資家として)洗練されている一方,短期志向を有する可能性もあることが示唆されていると整理した.そして,これを会計情報の質への影響の観点から検討し,前者については会計情報の質を高める一方で,後者については低下させる影響があるとの仮説を導いた.さらに,外国人投資家という要素に加えて,異なるファクター(属性,所属国)を視野に入れることが必要であるとの結論に達し,こうした点からの分析の拡張を図ることとした.
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今後の研究の推進方策 |
FactSetを入手後,速やかに分析を進める.本年秋の学会での報告を視野に入れてきたが,COVID-19の感染拡大を受けて,多くの海外学会が中止,延期となっていることから,状況によって研究期間の延長可能性もありうる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主要なデータの購入が新型コロナウイルス感染症拡大によって遅延したため.
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