本年度においては、研究代表者が共同研究の成果として、日本会計研究学会第81回大会統一論題報告において、「会計情報の質に対する影響要因の多様性と変化」とする報告を実施し、当該報告については會計 203巻第1号(2023年1月)に掲載された。そこでは、外国人投資家をはじめとして、金融機関、事業法人、監査、資金調達と会計情報の質の関係について検証した。会計情報の質の指標としては、流動会計発生高の異常部分の過去5期分までの標準偏差を適用した。1994年から2019年までの25年間を分析期間とし、分析対象は、日本の証券取引所に上場または店頭登録している企業としている。その結果、利益の質の影響要因とされる財務構造、株式所有構造、分配政策は分析期間で大きく変化していることを確認し、さらに利益の質指標とその影響要因の関係が時点間で変化していることを見出した。これらの知見は、財務報告が企業関係者間の利害調整において一定の役割を果たしつつも、その役割が変化している可能性があることを示唆している。本課題の中心となる外国人投資家の影響としては、一部期間において会計情報の質を改善させる効果を有していることを示唆した。 本研究期間を通じて、外国人投資家が会計情報の質に及ぼす影響の検証を試みた。当初は国際的な比較分析を試みたが、データの制約や信頼性の点で検証が困難であることが分かった。そこで、日本企業に焦点を当てた検証に切替え、上記の成果を得たところである。特に外国人投資家が会計情報の質に影響を及ぼすことを示した点で、本研究には一定の意義があると考える。
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