本研究では、退職給付に係る負債が日本企業のリスクテイクや現金保有、株主還元、企業行動について与える影響を検証した研究書『退職給付に係る負債と企業行動-内部負債の実証分析』(中央経済社、2020年)を出版した。本書では、内部負債の観点から日本企業がリスク回避的・保守的な論理を実証的に説き明かした。特に、退職給付に係る負債が大きいほど、(1)キャッシュフロー・ボラティリティの低下、(2)損失回避を目的とした研究開発費削確率の上昇、(3)出願特許数や被引用特許数の減少、(4)多角化水準の上昇、(5)現金保有残高の増加、(6)株主還元の消極化、(7)買収防衛策導入の確率上昇などの証拠を提示した。
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