研究課題/領域番号 |
18K01908
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
角ヶ谷 典幸 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80267921)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本的会計制度 / IFRS / グローバル化 / ローカル化 / 外圧 / 内圧 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本的会計制度がグローバル化とローカル化を同時に含む相互浸透の過程として形成されてきたという仮説を、会計制度改革の歴史、会計人の専門的判断、企業会計審議会の審議過程等を多角的に分析する作業を通じて検証し、新たな知見を提供することにある。本年度は主に以下の事柄を明らかにした。 国際学術誌では、制度改革(政策決定)が目的変数とされ、グローバル化(ローカル化)が説明変数とされることが多い。しかし、日本の会計制度改革の規則性を解明するためには、グローバル化(ローカル化)だけでは十分ではなく、外圧(内圧)という新たな座標軸が必要であることを明らかにした。とりわけ、外圧(グローバル化圧力)が有効に機能するのは、国内の主要なアクター(たとえば、政策決定者、日本経済団体連合会、財務諸表作成者)が外圧の必要性を認め、それを梃(口実)にして改革を進めようとする場合――つまり、外圧と内圧の方向性が一致するような場合――であることを明らかにした。また改革を成功に導くためには、操作可能性、つまり、改革に付随するコンフリクトを緩和させるための装置(選択権、例外規定、重要性基準、適用時期の延期)やカーブイン(アウト)などの措置が必要であることを明らかにした(Accounting, Auditing & Accountability Journalに掲載)。 また、国際財務報告基準(IFRS)の適用を巡る審議が行われた2008年から2013年までの企業会計審議会の議事録を分析した。その結果、金融庁や企業会計審議会は、政策決定に当たり、明示的な議論だけでなく、暗示的な神話を用いて(IFRSの強制適用は行わないとする)合意形成に至ったことを明らかにした(Pacific Accounting Reviewに掲載)。 そのほか、「会計人の判断」に関する先行研究を調査し、国際会計研究学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、国際学術誌に2編、論文2編を公表し、学会報告(統一論題報告)を1回行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、日本的会計制度がグローバル化とローカル化(あるいは外圧と内圧)を同時に含む相互浸透の過程として形成されてきたという仮説を検証し、本研究を総括する予定である。 同時に、研究成果を内外の学会で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス拡大の影響で国際学会(European Accounting Association)への参加がかなわなくなったため。国内外の学会における報告を含め、本研究遂行のために必要な予算として使用する予定である。
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