研究課題
本研究の目的は、日本的会計制度がグローバライゼーションとローカライゼーションを同時に含む相互浸透の過程として形成されてきたという仮説を、会計制度改革の歴史、会計人の専門的判断、企業会計審議会の審議過程等を多角的に分析する作業を通じて検証し、新たな知見を提供することにあった。国際会計や日本的会計に関する既存の知識では、日本的会計制度の特徴である会計基準の並存化・複線化がいかにして形成されてきたのか、日本の(公認)会計士の判断能力は本当に劣っているのか、国際財務報告基準 (IFRS) の適用を巡って審議を重ねてきた企業会計審議会においていかにロビイング活動が行われてきたのかなどを明らかにすることはできない。そこで本研究では、グローバライゼーションとローカライゼーションという視座を用いて、日本が自国基準を開発し続けている根拠、日本の会計士の判断特性、日本がIFRSを(強制適用ではなく)任意適用している理由などを明らかにした。具体的には、(1)比較的長いタイムスパンをとって、グローバライゼーションとローカライゼーションが日本の会計制度改革に与えてきた影響を検証した結果、日本の会計制度改革の規則性を説明するためには、キープレイヤーの特定と、「外圧」と「内圧」の影響を考慮する必要があること、(2)日本の(公認)会計士の判断力の特徴の一端を、実験会計学の手法を用いて検証した結果、日本の会計士は細則主義だけでなく、原則主義の会計基準にも対応できているが、同時にパーソナリティの多様化が進んでいること、(3)企業会計審議会の議事録を内容分析した結果、金融庁は、日本経済団体連合会などの主要なステークホルダーと協同して様々な政治的手法(レトリック)を用いてIFRSの強制適用に関する議論を無期限で延長させたことなどが明らかになった。
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