研究課題/領域番号 |
18K01912
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
張 櫻馨 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (70404978)
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研究分担者 |
三浦 敬 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (50239183)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | のれん / 減損損失 / 規則的償却 |
研究実績の概要 |
本研究では、当初①のれんの減損情報の開示実態と②その影響を実証的に解明するという2つの研究課題を挙げている。前年度には②から着手するよう、研究計画を変更した。予定通りに、検証に必要なアナリスト予想などを入手し、のれんに減損会計のみを適用するIFRSサンプル・グループと、規則的償却・減損会計併行適用JGAAPサンプル・グループを特定することができた。貸借対照表、損益計算書とキャッシュフロー計算書の3つの視点から、医学分野で広く使用されている手法を用いて、両グループから限りなく類似しているペア・サンプルを抽出する作業を行ったが、残念ながらうまく抽出することができなかった。そこで、検証方法を見直すために、ヨーロッパ企業を検証対象とする先行研究を中心にサーベイを行うことにした。というのも、ヨーロッパでは、2005年にIFRSに強制的に移行することで、IFRS第3号を適用することとなったからである。そのため、IFRS第3号適用前後を課題とする研究は、多く蓄積されている。このサーベイ作業を通じて、新しい検証手法を特定することができた。そこで、新しい検証方法に合わせて、2020(前)年度までに収集したIFRSサンプル・グループと、JGAAPサンプル・グループを収集し直した。 検証対象期間は。2010年から2019年の10年間である。本研究が設定したサンプル選択基準を満たすIFRSサンプル・グループは309社・年で、JGAAPサンプル・グループは、5,124社・年である。現在、JGAAPサンプル・グループを対象に検証に必要な定性的情報を収集する作業を行っている最中である。今後、IFRSサンプル・グループにも同じ作業を行い、収集してきたデータを整えてから、検証にかけたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度まで計画通りにIFRSサンプル・グループとJGAAPサンプル・グループを収集した。パイロット・テストとして、まず1年分のデータを使って、研究計画に挙げた方法で両グループからペア・サンプルを抽出しようと作業を行った。具体的には、両サンプルの差異を表す変数(本研究の課題として挙げた変数でもある)と、共通点を表す変数を同時に式に組み込んで、検証を行う作業である。その結果として、差異を除き、それ以外の特徴は限りなく同じであるようなペア・サンプルを抽出することができるはずであった。残念ながら、差異を表す変数を計画通りに式に組み込むことができなかった。そのため、検証方法の変更を余儀なくされた。 3年目の今(2020)年度には、1年目に行った先行研究のレビューと、2年目に実行したデータの収集をすべて見直して、新しい検証手法を探ることにした。その結果、資産計上後のれんに適用されている2つの方法の優劣を検証できる新しい方法に辿り着くことができた。2020年度中に検証に必要なサンプル企業を特定する作業が完了した。現在、検証に必要な定性的情報を収集している最中である。何とか遅れている研究計画を取り戻したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度前半に計画を作成した当初に予見できなかった課題に直面した。それを解決するため、研究手法を全面的に見直した。しかし、コロナ禍によって、大学の講義は急遽オンラインに切り替わることとなった。それによって、ZOOMによる講義の進め方、TeamsやStreamの使い方を習得したり、講義資料をオンライン用に作り直したりする作業に追われた。また、出校の制限によって、データベースを思うように使用することができなかった。海外研究者との交流もすべて中止となった。 2021年度は研究計画の最終年度であるが、コロナ禍の収束が見えない現状では、本研究を計画通りに終了させるには、ハードなスケジュールになるといわざるをえない。「5.研究実績の概要」で触れた2つの課題のうち、現在進行中である②の課題を優先的に完成できるよう進めている。その上で、できれば、現在収集中の定性的情報を使って、①の一部を検証できればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画は、定期的に海外の大学に行ったり、学会に出席したりすることで、海外の研究者との交流を重ねった結果である。昨年度はコロナ禍で予定していた国際交流はすべて中止することとなった。時差などでオンラインを通じた意見交換はなかなかうまく進めることができなかった。その予算が4年目(2021年度)に繰り越す結果となった。 本研究をブラッシュ・アップし、さらに展開させるために、「5.研究実績の概要」で触れたように、2021年度中には認められる範囲内、ヨーロッパの大学や学会を中心に精力的に足を運びたいと考えている。
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