研究課題/領域番号 |
18K01914
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
森 勇治 静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (90295569)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スマートシティ / NPM改革 / ガバナンス / アカウンタビリティ / クリティカルアカウンティング / 公会計 / 官民連携 / 病院 |
研究実績の概要 |
本研究はNPM(新公共経営)改革として世界各国で取り組まれてきた自治体活動におけるガバナンスとアカウンタビリティ改革が、日本において、いかに受容もしくは抵抗されてきたのかを明らかにする。単純に記述するだけではなく、社会的構築物としてガバナンスとアカウンタビリティを見つめ、社会学・哲学等の理論によって説明する「クリティカルアカウンティング」に本研究は分類できる。本研究の成果をトップジャーナルに掲載することを最大の目的とする。 本年度の成果については以下の通りである。 (1)自治体病院のガバナンスとアカウンタビリティ研究についての追加調査を実施し、学会報告、投稿・査読を経て、Social Science and Medicine誌へ掲載が叶った。 (2)スマートシティのガバナンスとアカウンタビリティについての広範な調査と初期の論文の作成を行った。スマートシティとは、ICT(情報コミュニケーション技術)を活用しながら、都市における環境・エネルギー・交通・通信・教育・医療介護・住宅等の様々な問題を、官民連携によって解決する取り組みである。日本を含む世界各地で様々な取り組みが行われている。しかし高齢化と人口減少が進む課題先進国ともいわれる日本の事例については技術的側面を取り上げる英文研究はあるが、社会科学的研究はほとんど見られない。そこで我々は日本の代表的な成功事例として知られるある自治体についてのケーススタディを行った。特に興味深い発見事実は次の通りである。海外の事例と異なり、官民の関係が売手と買手の関係にない。そこでは民間企業同士が新規事業への取り組みを行っており、その環境への影響を当該自治体では政策の成果として認識している。このケースについての説明理論としてBoltanski and Thevenot (2006) で議論された'compromise'を利用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)自治体病院研究については、EAA,APIRA等の高いレベルの学会での報告を行った結果、有益なコメントを多数を受けて、修正を加えた論文を作成した。その後、医療に関する社会学研究を幅広く掲載する、当該領域におけるトップジャーナルの一つであるSocial Science and Medicine誌(IF=3.087)に投稿し、査読を経て、2020年1月に掲載が認められた。 本研究はトップジャーナルへの研究成果を掲載することを目的としていたので、本研究の目的は2年目で達成できた。
(2)スマートシティ研究については、行政、議会、参加企業、国際機関を含む広範な関係者へのインタビューを実施後、学会報告用論文を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響から国際学会も軒並み中止となっていることから、スマートシティ論文へのフィードバックを受ける機会も減り、論文のブラッシュアップが難しくなっている。ただ今後はウエブベースでの学会や研究会が計画されている。既にスマートシティガバナンスとアカウンタビリティについてのウエブベースの研究会への参加の打診も受けている。論文へのコメントが受けられたとしても、現状では追加の調査も難しい。従って雑誌への投稿も遅れ気味である。
最終年度としての研究テーマとしては、日本で多発する大規模自然災害のガバナンスを取り上げる。2015年に仙台市で開催された第3回国連防災世界会議で国連加盟国により採択された2030年までの国際的な防災指針である「仙台防災枠組み2015-2030」では防災ガバナンスについても取り上げられたが、その後に発生した日本の災害において、どのように機能したのかについて、特に多様な利害関係者がどのように協働できたのかについて、検討を加えたい。ただし、実態調査が実施できるかどうかは、COVID-19の状況次第である。
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