研究課題/領域番号 |
18K01916
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小形 健介 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 准教授 (20347694)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 会計規制 / 企業会計審議会 / コンバージェンス / 強制適用 / 任意適用 / 会計の政治化 / 金融庁 |
研究実績の概要 |
本研究は,企業会計審議会(BAC)によるIFRS適用に関する問題を社会・経済政策の一環として捉え,2008年~2015年の間における,BACによる強制適用の推進という政策形成から任意適用の促進という政策転換に至るまでの一連のプロセスを対象に,新制度論における制度の形成・変化のフレームワークを用いて,「政策および制度はどのように,そしてなぜ形成されるのか」を明らかにするものである. 2018年度は,①分析フレームワークの精緻化,②IFRS強制適用をめぐるBACの見解や動向,および当該問題に関わるアクター(政府,産業界,金融界,会計プロフェッション,財務諸表利用者等)の見解や動向の調査にもとづいた,IFRS強制適用に関わる問題の全体像の描写,③社会ネットワーク分析実施に向けたBACメンバーの職歴等の調査,そして④テキスト分析実施に向けた審議会議事録の整理,を行うことを予定していた. 上記①については,それを常に行う必要があるが,概ね順調に進んでいる.上記③と④は既に終了している.また,上記②については,一部のアクターに対する検討が済んでおらず,2019年度に実施する予定である. 以上の調査をもとに,2018年度には,2つの研究を行った.一つはBACの意向を受けてその政策を実施するASBJの2013年~2016年の基準開発活動を対象として,その組織構造および中心的利害関係者の環境認識にもとづいて分析した研究である.もう一つは,2008年~2012年までのBACの活動をASBJとの関係性に焦点を当てて分析した研究である.前者は,2019年5月にPaphos(Cyprus)で開催されるEAAにおいて,また後者は同年6月にSiena(Italy)で開催されるWorkshop on Accounting and Regulationにおいてそれぞれ研究報告を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」にて既述したように,分析手法の開拓および分析視角の精緻化は,常にその動向を捉える必要があるが,社会ネットワーク分析を実施するためのBACメンバーの職歴等やテキスト分析を実施するための審議会議事録の整理といったデータ整理は終了している.ただし,IFRS強制適用をめぐる問題の全体像を把握するという課題に対して一部のアクターに対する検討が済んでおらず,2019年度に実施する予定であることから,概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度では,2018年度に引き続いて,IFRSの任意適用促進が図られた時期の,BACメンバーの職歴等の調査および審議会議事録の整理を行う.それらに取り組むと同時に,2018年度に実施し,そして一部は2019年度に実施する予定の,IFRS強制適用をめぐる問題の全体像を把握したうえで,「2008年~2011年の間,BACの強制適用推進は,どのようにして展開されたのか?それはなぜか?」の分析を実施する. さらに,2020年度では,2つの分析,「2011年~2012年の間,BACの強制適用推進の回避は,どのようにして展開されたのか?それはなぜか?」と「2013年以降,BACの任意適用増加という政策の転換は,どのようにして展開されたのか?それはなぜか?」の分析を実施したうえで,本研究のまとめを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は,データ整理(テキスト分析実施のための基礎データ作成および利害関係者の言説にもとづく環境認識の把握)のために人件費・謝金を計上していたが,その事前準備に時間がかかったためである. 上記データ整理のための人件費・謝金(2018年度75,000円程度)は2019年度に実施する予定である.
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