2022年度は、これまでの文献研究の結果と、2018年度、2019年度に実施した企業訪問調査の結果を総合して、2022年11月に日本組織会計学会(青山学院大学)にて「海外現地法人の人的資源管理と管理会計」と題した研究報告を行った。報告の内容は、2020年度に執筆した論文をベースにしたものである。In-OutのM&Aなどで海外企業を取り込むと、グローバル・グループ管理が影響を受ける可能性がある。多様な価値観を持った海外人材との間で文化摩擦が生じる可能性がある。また、国ごとに異なる物価水準や現地労働マーケットが人的資源管理にも影響を与える。その一方で、管理会計は日本の影響を受けている。これは、連結で業績が評価されることも一因であると考えられる。本報告では、人的資源管理とこれに対応した管理会計について、4社の事例を通じて検討した。管理会計制度については、少なくとも制度上は、4社とも日本と同様の仕組みを導入していた。また、人的資源管理については、現地の慣習に即した人材採用、報酬制度の適用をしていた。海外現地法人のトップは、4社のうち3社がローカル人材であり、トップがローカルである期間が長いほど、人的資源管理面の権限移譲も進んでいた。管理会計制度はグローバルで共通化しつつ、現地での管理可能性や文化に適応した運用にすることで、海外現地法人の人事・人的資源管理を活性化できると考えられる。 また、2022年度には、本研究に関連して、海外子会社の配当、ロイヤルティ支払に関して論文を2本執筆した。親会社の決算状況、出資比率により支払の優先順位が異なることを明らかにした。 研究期間内に、2018、2019年度にメキシコ、2018年に中国大連での現地法人調査を実施した。また、学会報告を2018、2019、2022年度に計3回行った。論文は、2018年度、2020年度、2022年度に計4本執筆した。
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