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2019 年度 実施状況報告書

数学理論を用いた財務諸表エラーの測定とグループ企業間の取引構造がそれに与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 18K01922
研究機関東京経済大学

研究代表者

金 鉉玉  東京経済大学, 経営学部, 教授 (40547270)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードベンフォードの法則 / 財務諸表エラー / 非上場会社 / 関係会社取引 / 有価証券報告書提出企業
研究実績の概要

本研究の目的は、数学理論を財務情報の質の測定に応用することが可能であるかを検討することである。そのために、ベンフォードの法則を用いて財務諸表エラーを測定していく。今年度は企業の所有構造と財務諸表エラーについて検討を行った。そのために、所有構造が異なるパブリック企業とプライベート企業を取り上げた。ただし、プライベート企業はいわゆる中小企業ではなく、有価証券報告書提出企業のうち上場していない企業である。
上場企業と中小企業では、ディスクロージャー制度や会計基準および監査制度といったそれらを取り巻く制度環境があまりにも異なるため、所有構造の他にもコントロールする要因が多くなる。一方で、有価証券報告書提出企業は、上場企業も非上場企業も基本的には同じ(類似した)制度環境下にあるため、所有構造と財務情報の質の関係をより厳密に分析することができる。ただし、この非上場企業についてはほとんど分析が進んでおらずその全容が掴めていたいため、まずは上場企業と非上場企業の基本的な属性を比較した。その結果、①非上場企業は上場企業に比べて規模が小さく、収益性も低い、②非上場企業は上場企業よりデッドファイナンスが、上場企業は非上場企業よりエクィティファイナンスがより行われている、③非上場企業の所有権がより集中していることがわかった。
続いて、有価証券報告書提出企業のうち上場企業と非上場企業について、先行研究で多く用いられるアクルアールの質を比較した結果、非上場企業の方がその質が高かった。一方、ベンフォードの法則を用いた財務諸表エラーについては、上場企業がその質が高く、アクルアール分析とは反対の結果が得られた。今後はこのような相違が生じる理由を踏まえながら、ベンフォードの法則で推定した財務諸表エラーの有効性について検討していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、所有構造が異なるパブリック企業とプライベート企業を取り上げ、その財務情報の質を比較する研究を進めた。その結果、上場企業と非上場企業と基本的な属性を比較する論文を執筆した。さらに、両グループ間の財務情報の質を比較分析した論文を執筆し、いくつかの学会で報告を行なっている。したがって、当初予定した計画通り研究が進んでいると評価できる。

今後の研究の推進方策

今年度の分析では、財務情報の質の代理変数として先行研究で多く用いられるアクルアールの質から得られるインプリケーションと、ベンフォードの法則を用いた財務情報の質の尺度から得られるそれが異なる可能性が示唆された。一方で、両者はそもそも正の相関があるので、上記の結果の違いは他の要因が影響する可能性もある。今後は、これらの相違を踏まえながら、数学理論の応用可能性を引き続き検討していく予定である。
さらに、ガバナンスやグループ企業間の取引などのグループ構造に注目し、それらが財務諸表エラーに与える影響についても分析する予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度に国際学会での報告を数回計画しているため、次年度使用額が生じている。しかし、COVID19感染拡大防止のため、学会の中止・延期・およびオンライン開催が続いているため、今後の研究費支出計画に支障が出る可能性がある。
なお、当初予定していた人件費・謝金の支出が少ないのは、グループ構造について当初ハンドコレクションを行う予定であったものの、データベースを購入することで当該データを取得できることが後から分かったためである。したがって、人件費・謝金の予定額をデータベース購入に使用した。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 上場企業と非上場企業の財務内容の比較- 有価証券報告書提出企業を用いて2020

    • 著者名/発表者名
      金鉉玉
    • 雑誌名

      『東京経大学会誌』経営学

      巻: 306 ページ: 139-160

    • DOI

      http://hdl.handle.net/11150/11477

  • [学会発表] Earnings Quality, Public Debt, and Ownership Structure: Listed Versus Unlisted Public Companies2019

    • 著者名/発表者名
      Hyonok Kim
    • 学会等名
      Korean Accounting Association
    • 国際学会
  • [学会発表] Economic Policy Uncertainty and Earning Management: Effects on governance mechanism in Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Hyonok Kim
    • 学会等名
      Economic Policy Uncertainty and Corporate Policies around the World
    • 国際学会
  • [学会発表] 上場企業と非上場企業の利益の質の比較分析2019

    • 著者名/発表者名
      金鉉玉
    • 学会等名
      日本会計研究学会

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公開日: 2021-01-27  

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