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2018 年度 実施状況報告書

機械学習を応用した財務諸表の不正発見

研究課題

研究課題/領域番号 18K01923
研究機関法政大学

研究代表者

坂上 学  法政大学, 経営学部, 教授 (50264792)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード会計不正 / 機械学習 / ディープラーニング / テキストマイニング / XBRL
研究実績の概要

「会計不正」のサロゲートとして従来の研究では「倒産」企業の財務諸表を用いてきたという歴史がある。しかしながら会計不正と倒産は同じ事象ではない。会計不正をおこなったとしても倒産に至らないケースはいくらでもあるからだ。このようなケースは社会的インパクトが低いせいか、Kwon & Feroz(1996)が指摘しているように、これまで倒産研究に比して会計不正についての研究は蓄積がなされてこなかったといえる。そこで、まずは会計不正とは何かについて、これまでの文献をレビューし、そこで示されている定義を比較検討することが必要であると考えた。たとえば『監査基準委員会報告書240』によれば「不当又は違法な利益を得るために他者を欺く行為を伴う、経営者、取締役等、監査役等、従業員又は第三者による意図的な行為」としているが、この他にも多くの定義があり、現時点では統一的な定義は存在していないということが判明した。
会計不正という事象を隈なく拾い上げた上で、機械学習への応用を試みた研究というのは極めて少ないと言える。たとえばFanning, Cogger & Srivastava(1995)、Gottlieb, Salisbury, Shek & Vaidyanathan(2006)、Perols(2011)など、数えるほどしか見当たらない。Moyes & Hasan(1996)が指摘するように、監査人が不正な財務報告を発見することに資するべきという議論に対して注意を払われてこなかったという背景があったためと考えられる。日本において発生した比較的大きな会計不正事例については、浜田(2008)、米澤(2014)、井端(2015)らの著書の中で詳しく述べられているが、いずれも取り上げている年度、範囲、粒度が一定ではなく、会計不正の事例を網羅的に収集することは、それゆえ非常に困難であることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初は、初年度にChainerやTensorFlowといった深層学習フレームワークを整備したコンピューターシステムの導入をおこなう計画であったが、昨今の仮想通貨ブームによるマイニングファーム乱立の影響を受け、必要となる機器(具体的にはCUDAコアを大量に搭載したGPU)の品薄と高騰が続き、期間内・予算内でのシステム構築が困難な状況であった。そこで、コンピュータシステムの整備はいったん後回しにし、EDINETやTDNetより入手できるXBRLデータを中心とする分析用のデータ収集と、機械学習を用いた会計不正発見についての文献レビューについてのみ行うことにした。

今後の研究の推進方策

まずは初年度に導入予定だったコンピュータシステムの導入をはかり、深層学習フレームワークであるChainerやTensorFlowのインストールその他の環境整備をおこなうことにする。そのうえで、文献レビューの結果として判明したように、会計不正の事例を様々なソースから丹念に拾い上げ、なるべく多くの事例を収集する作業をすすめることにする。具体的には、EDINETからXBRL形式の有価証券報告書データを網羅的に収集すると同時に、TDNetからも適時開示情報など収集できる限りすべての情報の蓄積をおこない、会計不正に関する事例とともに、分析用データの収集に努めることにしたい。
実際の分析としては、有価証券報告書に含まれる定性的データを用いたテキストマイニングをおこない、会計不正につながるキーワードの析出などを試みるところから始める予定である。

次年度使用額が生じた理由

昨年度導入予定だった深層学習フレームワーク用のコンピュータシステムが構築できなかったため次年度使用額が生じた。コンピュータシステムは今年度に導入する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 学会発表 (2件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ITやフィンテック等の発展が税務会計研究に与える影響2018

    • 著者名/発表者名
      坂上 学
    • 学会等名
      税務会計研究学会第30回全国大会
  • [学会発表] 研究方法のパラダイムシフトをもたらすもの2018

    • 著者名/発表者名
      坂上 学
    • 学会等名
      日本経営分析学会・日本ディスクロージャー研究学会連合大会
  • [図書] 会計制度のパラダイムシフト―経済社会の変化が与える影響2019

    • 著者名/発表者名
      河﨑照行編
    • 総ページ数
      424
    • 出版者
      中央経済社
    • ISBN
      450228971X
  • [図書] 簿記と帳簿組織の機能―歴史的・国際的視点から2019

    • 著者名/発表者名
      原俊雄編
    • 総ページ数
      216
    • 出版者
      中央経済社
    • ISBN
      4502294519
  • [備考] 法政大学経営学部 坂上学研究室

    • URL

      http://www.sakauelab.org/

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公開日: 2019-12-27  

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