研究課題/領域番号 |
18K01926
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
堀井 悟志 立命館大学, 経営学部, 教授 (50387867)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アメーバ経営 / 役割曖昧性 / 役割葛藤 / 財務業績 / 管理会計プロセス / 目標達成意欲 / コミュニケーション / 制度間対立 |
研究実績の概要 |
2019度は高度な生産管理・品質管理制度を有する企業におけるアメーバ経営の導入成果について,管理会計プロセス,役割理論,動機づけ,コミュニケーションおよび財務業績への影響を中心として統計分析を進めた。平均の差の検定からは,アメーバ経営の導入によって,役割曖昧性が増大し,目標達成意欲とコミュニケーションが減少するという負の側面が見られた一方で,予算参加が増大し,管理会計プロセスの増強が図られていることが分かった。しかし,さらに1年後のデータからは,役割曖昧性は増大しつつも目標達成意欲とコミュニケーションが回復しており,もともと高度な生産・品質管理を有している企業では,アメーバ経営との対立が一定程度存在し,それによる負の側面が一旦表層化するが,受容プロセスを経て対立が解消されていることが示唆された。また,管理者と一般従業員の変化の違いも分析し,アメーバ経営の導入に対して中間管理者の抵抗とそこから従業員への伝播が明らかになった。そのうえで,業績に対する回帰分析を行い,役割曖昧性や役割葛藤といった役割ストレスへの認知が高くなった場合,管理会計プロセスの調整効果が表れることが明らかになった。これまでの研究では,管理会計によって役割ストレスが減少することによって業績が向上するという関係が示されてきたのに対し,本研究では役割ストレスの業績への関係に対する管理会計の調整効果の存在が明らかになった。また,本研究からは,役割ストレスが低い場合は,調整効果は確認されず,役割ストレスが高い場合のみ,確認され,管理会計プロセスの調整効果が単純な線形関係ではなく,複雑性と非線形性を有していることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析の順序は当初の想定とは異なるものの,期待していた通り,アメーバ経営の導入成果に関する定量的な分析によって,制度間対立の存在とその解消を示唆する結果を得ることができたため順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
混合型研究法として,2020年度は,定量的研究によって確認した制度間対立とその解消について,聞取調査や内部資料の分析といった定性的分析によって,その状況やプロセスをより詳細に調査し,検討する。これによって,豊かで頑健な知見の蓄積が期待できる。
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