本研究の目的は、管理会計の変化を引き起こす組織的行動パターン(ルーティン)とはどのようなものかについて明らかにすることである。2021年度は、かかる研究目的を達成するために、コロナ禍で遅延していたリサーチサイトの国内外の事業所を訪問してのインタビュー調査を実施予定であった。しかしながら、当初予定していたフィールド調査を十分に実施することができなかった。このような事態に対応するために、一部協力の得られたものについては、WEB会議システムを利用したオンライン調査という形で実施した。また、文献調査を中心に実施し、可能な限り過去に収集したデータを用いた分析を行うことで対応を行っている。 これらにより、論文4本、ワーキングペーパー1本を公刊した。このうち、雑誌『會計』に公刊した論文では、管理会計変化を理解するために、主に組織論領域において発展してきたルーティンダイナミクスに関する議論を参照しつつ、管理会計変化を管理会計の知識と実践の再帰的なプロセスとして理解することが可能であることを示した。このような見方は、管理会計実践が遠くから見れば一定の同一性を保ちつつ、近くから見れば常に変化することを示唆するものである。これは管理会計を進化させる組織的パターンの分析を目的とする本研究の問いに対して、理論的観点から答えようとするものであり、管理会計実践が外生的なメタ・ルーティンによって変化するのみならず、ルーティンそのものが内生的に変化するということを理解することに資する。このような視点は、様々なラベル付けされた管理会計技法(ルーティン)の空間的な複製(普及)や時間軸上での複製(維持)を理解することを可能にし、知識と創造性に関する諸研究の成果との接合を通じて、管理会計変化のプロセスのより良い理解に貢献する。 現在、これらの成果をさらに発展させ、書籍等においてその成果を発信すべく努力を行っている。
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