研究課題/領域番号 |
18K01929
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
杉本 徳栄 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (50206695)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脱グローバル化 / 英国のEU離脱(ブレグジット) / 政治任用 / 財務報告規制 / 国際財務報告基準(IFRS)開発 / 証券取引委員会(SEC) / 財務報告評議会(FRC) / 国際会計基準審議会(IASB) |
研究実績の概要 |
第一の研究課題である「英国のヨーロッパ連合(EU)離脱(ブレグジット)後の財務報告と国際財務報告基準(IFRS)開発に関する政治・経済分析」について、本年度は、ブレグジットの動向に関わる情報を収集し、整理するとともに、英国の議会政治、会計制度と財務報告規制などについて検討を進めた。 この第一の研究課題を実施するなかで、第三の研究課題である「IFRS財団のガバナンス構造とエンドースメント・メカニズムへの影響に関する政治・経済分析」の実施に向けて、国際会計基準審議会(IASB)の関係者への聞き取り調査などを通じて、ブレグジットとIFRSの関わりについて考証する情報や研究資料などの収集に努めている。 本年度の研究成果は、第二の研究課題である「米国の政治任用とシンクタンク活動による財務報告規制への政治・経済分析」にみられる。 とくに、会計制度設計をもたらす環境変化の要因には政治ファクターが存在し、世界金融危機と日本・米国の会計制度設計のなかでみられることを明らかにした。これは、国際財務報告基準(IFRS)導入と政治との結び付きなどを明らかにしたもので、日本会計研究学会第77回全国大会の統一論題報告・討論で報告するとともに、「会計制度設計における政治ファクターとその影響」(『會計』第195巻第1号、2019年1月)として公表した。また、米国の財務報告規制のなかで、証券取引委員会(SEC)の専管事項であるIFRS適用問題について、大統領による政治任用の視点から、第一次資料などの整理を通じて、政権政党による取り組みの違い、その実態と特徴を解明した。この研究成果は、「SECコミッショナーの政治任用とIFRS適用問題」(『商学論究』第66巻第4号、2019年3月)として公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年3月の英国のEU離脱通告(EU条約第50条の発動)以降、英国とEUによる離脱協定についての交渉を政府関係機関の公式文書などをもとに整理してきた。英国の会計と監査に関する規制当局の財務報告評議会(FRC)によるEU離脱と会計・監査への影響に関わる公式文書なども収集し、これまでの取組みと今後の方針や方向性などについても分析を試みている。 また、1934年に創設された米国のSECの歴代コミッショナーと主任会計士について整理したデータベースを拡張・更新した。ただし、政治的特性などについてデータ収集が十分でなく、引き続きこの特性のデータ収集に努める。
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今後の研究の推進方策 |
英国議会は、EU離脱予定日の2019年3月29日までに離脱協定案を採決できず、その後のEU首脳会議で10月31日までのEU離脱延期が承認された。次年度は、英国のブレグジット後の財務報告とIFRS開発に関する政治・経済分析に向けて、英国議会はもとより、英国とEUによる離脱協定についての交渉の動向を引き続き見極め、政府・FRCをはじめ関係機関の公式文書などを収集・整理し分析する予定である。 今後のブレグジットとIFRS開発や財務報告規制との関わりについては、とくにFRCとIFRS財団・IASBへの聞き取り調査などを実施し、本研究課題の究明に向けてさらに踏み込んで推進していく予定である。この間の研究プロセスで、本研究課題に関わるFRCの担当者も明らかとなり、より積極的な調査を試みる。 米国のトランプ大統領の金融・経済政策の財務報告規制への影響についても検討を深める。大統領の政治任用とSECコミッショナーの規制措置の意思決定との関係やその影響、SEC主任会計士の役割などについても、データなどをもとに検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、本年度購入を予定していた設備備品費のノートパソコンなどを購入しなかったことによるものである。 本年度の研究実施計画は、英国のEU離脱予定日(2019年3月29日)に向けた英国議会のEU離脱協定案の採決を巡る動向、英国のFRCの当該ブレグジットと会計・監査への対応などの公式文書の収集と整理、そして米国の大統領の政治任用とIFRS適用問題の検討などに重点を置いてきた。 収集した公式文書、そしてこれから収集する公式文書などの解析とともに、拡張・更新したデータベースなどによるデータ解析は、次年度以降に展開する予定である。そのため、処理能力の優れたノートパソコンなどは次年度に購入し、データ解析などを実施する計画である。
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