研究課題/領域番号 |
18K01930
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中村 亮介 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (40549713)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 財務制限条項 / コベナンツ / 抵触 / 債務契約 / 利益維持条項 / 純資産維持条項 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,債務契約に付される,借り手企業の財務諸表ないし会計情報に依拠した「約束事・誓約」を表す財務制限条項の最適な組み合わせを明らかにするため,多面的に実証研究を行うことであった。 2018年度は,財務制限条項に係る情報の収集のため,企業の有価証券報告書から該当する情報を手作業により拾い集め,これまでの2004-2013年までしかなかったデータベースを2017年12月までアップデートした。 また,金融機関へのアンケート調査の準備を行った。具体的な質問項目は,メインバンク制に関する質問,金融機関による会計情報の利用方法に関する質問,財務制限条項に関する質問の3部に分けられる。これに関しては,2019年4月中に実施する予定である。 さらに,財務制限条項のデザインに関する研究をレビューし,論文を執筆した(中村亮介(2019)「サロンドクリティーク 2タイプの財務制限条項に期待される役割」『企業会計』第71巻第5号,6-7頁;中村亮介(2019)「サロンドクリティーク 債務契約に適した利益の性質は?」『企業会計』近刊)。 関連研究として,生命保険会社が任意開示している情報が株価との関連性を有するかについて検討した論文(塚原慎・中村亮介・西山一弘(2018)「Embedded Valueが株価形成に及ぼす影響」『會計』第194巻第5号,75-89頁)を執筆した。さらに,これらの知見をもとにテキストを分担執筆した(中村亮介(2019)「財務諸表の仕組みと読み方」新田忠誓編著『エッセンス簿記会計(第15版)』森山書店,321-332頁)。 なお,2018年度中に第61回 日経・経済図書文化賞(受賞作:中村亮介・河内山拓磨(2018)『財務制限条項の実態・影響・役割-債務契約における会計情報の活用-』中央経済社。)を受賞し,本研究の方向性に誤りがないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
財務制限条項データベースの構築は順調に進行している。また金融機関へのアンケート調査も準備が完了し,2019年4月中に送付予定である。さらに,2018年度は論文3本(うち,近刊1本),著書1冊(分担執筆),学会報告2回,その他著作1本を執筆した。 以上の事実より,本研究課題の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は金融機関へのアンケート調査を回収し,調査結果をまとめる。また,構築したデータベースをもとに,日本においても海外と同じく,純資産維持条項は債権者と株主との間に生じるエージェンシー問題を調整する,利益維持条項は債権者へのコントロール権をタイムリーに移転するというそれぞれの役割を期待されているかについて実証研究を行うことで確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査の実施時期が2018年度から2019年度へと変更したためである。2019年度に遅滞なく調査を実施するので,繰り越した研究費を使用する予定である。
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