研究課題/領域番号 |
18K01934
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山地 秀俊 神戸大学, 経営学研究科, 経営学研究科研究員 (40127410)
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研究分担者 |
後藤 雅敏 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70186899)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 短期主義 / 過度な経営者報酬 / fMRI実験 |
研究実績の概要 |
本研究では人間が時間的観点からは将来価値を割り引く行為を時間割引(time discounting)と呼び、対人関係で他者に与える価値を割り引く行為を対人割引(personal discounting)と呼ぶ。また、自身の割引率の推定を個人割引(individual discounting)と呼び、自身の割引率ではなく他者の割引率を推定する行為を、特に便宜的に、社会割引(social discounting)と呼ぶ。 本年で行った実験研究の結果から、以下のように仮に結論できる。行動実験の結果では、時間割引そして対人割引ともに、他人の割引率を推定すると、自らの割引率よりも統計的に有意に大きく推定することが判明した。またそうした割引を規定する脳内システムについては、時間割引が基本となっており、個人の対人割引までは、そうした基本システムを流用して推定していたが、対人の社会性を加味した割引率の推定では、新たな脳部位をリクルートして、新たな脳内システムが構築されていたとみられる。 この結果を我々は、現実の企業経営のグローバル化によって一層の競争激化が進み、より異質な人々の対応を考慮した意思決定をする必要に迫られたとき、自己防衛として自らの割引率を一層先鋭化させるという仮説の妥当性の根拠と考えている。時間割引では自らの割引率推定の時からすでに他者認識を司る部位が賦活していたが、対人割引ではプレキニアスが賦活して、相手の社会環境を想像する行為を促していることがうかがえる。さらに最近における経営上の大きな問題である短期主義や過度な経営者報酬の先鋭化が、経済のグローバル化に伴う経営者の割引行為の先鋭化から来ていることが説明できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
脳実験を比較的スムーズに行うことができたので、早めに仮の結果をワーキングペーパーにまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、いくつかの研究会で指摘された点、特に「なぜ個人の割引性向が社会的傾向として理解できるか」という指摘に対する理論的根拠を明確にしていく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
いくつかのセミナーで実験結果を報告したが、いくつかの問題点を指摘された。そこで指摘された実験の問題点を解消すべく追加実験、追加研究会を次年度に実施したい。そのために次年度に資金を繰り越すこととした。
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