研究課題/領域番号 |
18K01934
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山地 秀俊 神戸大学, 経営学研究科, 経営学研究科研究員 (40127410)
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研究分担者 |
後藤 雅敏 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70186899)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | fMRI実験 / 短期主義 / 過度な経営者報酬 / 割引性向 / 底辺への競争 |
研究実績の概要 |
科研第2年度となる2019年度は、海外からの研究者(M.Lang)教授を招聘して、労働問題についてデータ実証による研究方法の長所と短所を議論した。そのことを踏まえて、昨年度来、下書きをしてきた我々のfMRI実験の論文を再修正した。経営者の短期主義指向が分配の不平等性(労働者に不利)を助長しているとの認識を新たにして、経済経営においてグローバル化が進行する結果として、低賃金労働者を生み出す底辺への競争(Race to the Bottom)が激化し、それを刺激するのが脳内で起こる割引指向の先鋭化であるとの結論を得た。より具体的には、脳は自身の割引性向よりも他者の割引性向をより先鋭的なものとして推測する。それを可能にしているのは、グローバル化に伴う不慣れな環境下で割引行動をするときに、これまで割引行為を担当していた脳部位以外の部位を新たに動員するという知見を得た。それをもとに修正した論文をThe Universal Journal of Accounting and Finance, March 2020 に投稿して査読を通過した(Short-Termism, Excessive Executive Compensation and the Discounting Traits of Managers - by Using fMRI Experiment)。これで当初予定していた当該科研の研究成果は公表できたが、招聘教授との議論や実験過程で曖昧な個所がいくつか見いだされたので、可能ならば最終年度でそうした箇所を確認する補助的実験を行い、知見を新たにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研で予定していたfMRI実験の結果を用いた論文を海外査読雑誌に投稿して掲載された。医学系雑誌を含むいくつかの雑誌に投稿して、厳しい評価を得ることもあったが、その指摘をできる限り反映させて論文を完成させた。そのことで今回の脳実験の結果としたいが、医学系雑誌への投稿時に、我々の論文に飛躍があるとの指摘を受けので、自分たちの領域では飛躍とは感じなくても他領域から見れば細かく立証しなければならない点が多くあることを知って、最終年度はその飛躍を埋めるヒントとなるような補助実験ができればよいと考えている。そうした意味で、(2)の自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
成果として公表した論文にある他領域からみた飛躍を埋めるヒントとなる実験を残る1年でできればやってみたい。具体的にはfMRIを用いた脳実験で今回我々は文字文章による刺激を用いたが、より直感的直接的な図像情報を用いた刺激によって、同様の結論が得られるかを試みてみたい。それによって他領域からの論理的飛躍への批判として、直感的にも我々の主張が成立することを確認したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
主たる脳実験は終えていたが、追加的な実験は年度末からの新型コロナウイルス等の影響で濃密な接触の可能性があるMRI装置内部での被験者の雇用は躊躇があり断念した。次年度に補助実験として実施できることを期待している。
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