これまでに行ってきた双曲割引行動の脳内賦活の研究は論文として成果を出したので、分配に影響する割引活動に伴う脳内活動の研究の延長で、割引行動時の脳内活動と効率・公平を意識した経営者の賃金決定時の脳内活動の対比分析を行った。前年までにほぼ分析は終了したと思っていたが、細かい詰めが意外と難しくて最終結果の論文による公表を依然として準備している段階である。 経営者による賃金の決定(分配)という状況下での効率と公平両概念のトレードオフ的影響に関して、まず脳内処理では効率よりも公平の判断を下すときに、経営者(被験者)の脳は、活動が有意な脳部位数が少ないことが前年に分かっていた。効率判断よりも公平判断のほうが直感的になされているといえる。このことはさらに両概念の各々を考慮した意思決定にかかる時間が有意に異なっていることからも推測できる。すなわち効率のほうが余計に時間がかかっているのである。これはカーネマンの二重過程理論とも無矛盾であると思われる。またそうした双曲割引と効率公平のトレードオフ両概念に基づく分配判断のキーとなる部位は島(Insula)、中前頭回(MFG)、下前頭回(IFG)であることが本年度の詳しい分析で判明した。 さらに本年の分析では、対人への報酬支払の双曲割引で賦活する部位と、効率公平での調整で共通に賦活する部位はIFGであることが判明した。
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