研究課題/領域番号 |
18K01936
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
野口 昌良 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (70237832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 英国NHS / コスト改善プログラム / 職員給与費 / 収容施設投資 |
研究実績の概要 |
業績評価情報と資源配分意思決定を統合する試みは、業績予算(performance budgeting)としてOECD 加盟国において取り組まれてきている。業績予算は、業績評価情報を予算に関連づけることによって、資源配分における意思決定のクオリティを向上させることを主目的としている。リンケージについて程度の差はあれども、資源配分の意思決定に際して、目標および(過去の)成果といった業績情報が一定程度予算編成の根拠を形成するという意味で、共通要素が確立されている。とりわけ、発生主義ベースの予算制度を早期に導入した英国および豪州では、中期的な財政戦略・計画を立案・実施する過程で、具体的な年度予算の目標値を設定し、その達成状況を議会に説明するために業績予算を運用しているという意味で、他国に比して、業績評価情報と年度予算のリンケージは高い。 本研究の目的は、業績予算の導入により、業績評価情報と年度予算のリンケージの程度が高い英国および豪州の各種政府組織において、「業績制御性(performance contractibility)」(Spekle and Verbeeten 2014, 133-4))を媒介とする業績評価システムの状況依存アプローチがどのように成立しているかを検証することを目的としている。 2020年度は、2019年度に引き続き、英国NHSの財務および業務プロセス関連データを用い、その事業効率性を検証した。分析の結果、政府施策として採用されたコスト改善プログラムを組み込んだ予算管理が職員給与費の抑制に向けて運用された結果、英国NHSが提供する医療サービスの効率性向上に結びついたことが明らかにされた。また、医療機関による効率的サービス供給にとって、保有固定資産の適正規模へのコントロールが重要であることも示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者と密に連絡をとり、詳細な分析を実施し、一定程度の分析結果を得ることができた。他の研究結果と組み合わせて、分析結果を学術論文のかたちにまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
英国NHSの場合、提供するサービス範囲に関する裁量が少ないため、これらに対する制御の程度は低くならざるをえないが、Service Line Reporting(SLR)やPatient Level Costing(PLC)などのツールを利用して、効率の悪いエリアを特定し、サービス提供範囲のリバランスを行うこと期待されている。今後は、こうしたツールの導入がNHSの事業効率性にどのような影響を及ぼしたかを分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術論文が完成しなかったため、執行予算に残高が生じているが、次年度で使用する予定である。次年度に研究成果の公表のための経費に充当する予定である。
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