研究実績の概要 |
業績評価情報と資源配分意思決定を統合する試みは、業績予算(performance budgeting)としてOECD 加盟国において取り組まれてきている。業績予算は、業績評価情報を予算に関連づけることによって、資源配分における意思決定のクオリティを向上させることを主目的としている。リンケージについて程度の差はあれども、資源配分の意思決定に際して、目標および(過去の)成果といった業績情報が一定程度予算編成の根拠を形成するという意味で、共通要素が確立されている。とりわけ、発生主義ベースの予算制度を早期に導入した英国および豪州では、中期的な財政戦略・計画を立案・実施する過程で、具体的な年度予算の目標値を設定し、その達成状況を議会に説明するために業績予算を運用しているという意味で、他国に比して、業績評価情報と年度予算のリンケージは高い。 本研究の目的は、業績予算の導入により、業績評価情報と年度予算のリンケージの程度が高い英国および豪州の各種政府組織において、「業績制御性(performance contractibility)」(Spekle and Verbeeten 2014, 133-4))を媒介とする業績評価システムの状況依存アプローチがどのように成立しているかを検証することを目的としている。 2021年度は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の地方自治体の財政データを用い、その事業効率性を分析した。分析の結果、予算編成の不正確さ、とくに上位政府組織からの予期しない助成金の受領に起因する、超過支出は自治体の事業効率性を低下させる可能性があり、レジリエンスに深刻なリスクをもたらす可能性があることが示唆された。分析結果を、その他の研究結果と組み合わせて、学術研究のかたちにまとめた。
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