研究実績の概要 |
「インタンジブルズと企業価値」に関する研究の中,今年度は,①統合報告書に関係する研究,②中小企業のBSC導入のアクションリサーチ,③病院へのBSC導入に関する研究を行った。 統合報告に関する研究では,統合報告評議会(IIRC)のフレームワークとSmith氏が提唱する戦略的管理会計との関係を検討した。ここでの戦略的管理会計とは,サステナビリティ・イニシアティブの選択のことである。その意思決定が資本とサステナビリティ・インデックスに影響を及ぼすので,インデックスを最適にする戦略的意思決定をすべきだと提案した。これとIIRCとの関係を明らかにした。 中小企業のBSC導入のアクションリサーチでは,実際にBSCを導入について研究した。中小企業へのBSC度入は欧米だけでなく,日本でもその事例は多くはない。その原因はいろいろあるが,最も重要なことは導入コスト以上にその便益が上回らないためである。しかし,BSCに対する誤解も多く,適切に導入を支援できれば中小企業でもBSCを導入可能ではないかと考えて,アクションリサーチを行った。三共製氷冷蔵へのBSC導入によって,①戦略の質の向上,②戦略の浸透,③戦略実行力の向上,④トップの戦略策定能力の向上,⑤非財務業績の把握,⑥財務業績の向上,⑦他部門とのコミュニケーションの向上などが得られた。成果が得られたのは,①トップのコミットメント,②業務レベルでのデータ管理の実施,③現場への戦略新党を実施,という3つがうまくいったためである。 病院へのBSC導入に関する研究では,マネジメントの視点が遅れている療養型病院を対象にしたBSCの導入研究である。リサーチサイトのベトレヘムの園病院でのBSC導入目的,事業計画とBSCの関係,現状のBSCの課題を明らかにした。最後に,その対応策を提案して,今後のアクションプランの目指すべき姿を明らかにした。
|