研究課題/領域番号 |
18K01942
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
福田 淳児 法政大学, 経営学部, 教授 (50248275)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | マネジメント・コントロール・システム / 管理会計システム / 精緻化 / 形成型尺度 / 情報特性の視点 / 手続き・プロセスの視点 |
研究実績の概要 |
今年度は,MCSsの「精緻化」という構成概念の操作化について,文献研究に基づいて一層の検討を行った。構成概念と指標間との関係には,反映型モデルと形成型モデルが存在する(Jarvis et al., 2003)。Jarvis et al. (2003)は,適切な測定モデルの決定ルールの第1の視点として,構成概念と指標間の因果関係の方向性に言及している。本研究では,MCSsの「精緻化」とその下位次元として想定されるMCSsが提供する「情報特性」およびMCSsの「プロセスの包括性」との間の関係性について検討した。両者の因果関係については,MCSsの情報特性が精緻化し,プロセスの完全性が向上した状況が,MCSsの「精緻化」が高い状況と考えることができる。また,MCSsの情報特性とプロセスの完全性という下位次元は,MCSsの「精緻化」の異なる側面を示している。以上の点から,MCSsの「精緻化」という構成概念は「情報特性の観点」と「プロセスの完全性」といった2つの下位次元から構成される形成的尺度である。 次に,MCSsの「精緻化」の下位次元の一つである「情報特性」とその指標間との関係性について検討した。MCSsのアウトプットとしての情報特性としては,Chenhall and Morris (1986)によって提示された4つの特性が利用されてきた。これらの4つの情報特性とコンテクスト要因との関係は多様であることから,4つの指標間に共変動性がみられない可能性が示唆されている。さらに,法則定立ネットワークの観点からは,ここで提示された4つの指標は先行要因が異なる。以上の点から、MCSsの情報特性は,これらの4つの指標から構成される形成型モデルである。さらに,MCSsのプロセスの包括性については,Guenther and Heinike (2019)の研究に従い,形成的な尺度と考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究が遅延している大きな要因は以下のとおりである。 第1に,スタートアップ企業におけるMCSsの精緻化の程度および精緻化を促進する要因を明らかにするために実施を予定していた質問票調査のパイロットテストが,コロナ禍のためにインタビュー調査が実施できないことから遅れているためである。インタビュー調査で質問票の内容の適切性また表現上のわかりやすさの検証を行い最終的な調査につなげたいが,この作業が十分に行われていないことが一つの理由である。 第2に,既述のように,事前に予定をしていたスタートアップ企業への聞き取り調査がコロナ禍で実施が困難な状況にあり,ケース研究自体の進展が不可能であったことが研究が遅れた大きな原因の一つである。
|
今後の研究の推進方策 |
スタートアップ企業におけるMCSsの精緻化の程度およびMCSsの精緻化を促進するまたはそれを抑制する要因を明らかにする目的で,インタビュー調査を行うとともに,そこで得られた知見を組み込んで郵送またはインターネットを介した質問票調査を行う予定である。 このために,できるだけ早急にインタビュー調査を実施し,そのプロセスで質問項目の内容や質問内容の理解可能性についての検証を行い,ワードなどの修正・変更を行いたい。 また,実施予定のインタビュー調査は,実際の企業におけるMCSsの精緻化のプロセスおよびその影響要因を聞き取ることも目的としている。多様な環境また組織要因さらに創業者の理念がその後のMCSsの精緻化に与える影響を明らかにすることも大きな目的の一つである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究資金を計画通りに使用できなかった理由は以下のとおりである。 第1に,コロナ禍ということもあり,企業へのインタビュー調査が実施できなかった点である。このためにインタビュー調査に使用する資金を使用することができなかった。この点については次年度はインタビュー調査を実施する計画である。 第2の理由として,予定していた海外の学会への参加ができなかった点である。 さらに,第3の理由としては,第1の点と関連しているが,企業数社へのインタビュー調査の実施ができていないために,スタートアップ企業におけるMCSsの精緻化の程度及びそれを促進または抑制する要因に関する質問票調査のパイロットテストができておらず,最終的な質問票調査が実施できていないことが大きな原因である。これについては,インタビュー調査をできるだけ早急に行うとともに,実務家への個人的なネットワークを利用した質問票への意見収集を行い,最終的な質問票調査を行う。
|