研究課題/領域番号 |
18K01943
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
川島 健司 法政大学, 経営学部, 教授 (80406652)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 財務報告 / 非財務情報 / 会計用語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、 企業情報開示の枠組みである統合報告に着目し、その非財務情報の質的特性とその情報利用者に対する効果を明らかにし、統合報告実務の 実態と在り方を学術的観点から検討・評価することである。研究期間の第4年度にあたる本年度は、前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発出等の影響を受け、研究の遂行に遅れが生じた。特に本務校におけるオンラインを利用した講義の準備と実施に時間が割かれたことにより、本研究に費やす時間が制限された。 こうした中で、第4年度は前年度から継続して統合報告の制度と実務を幅広く観察すると共に、非財務情報の質を評価するための分析手法を検討・準備した。分析手法の具体的な検討としては、定性的調査法やテキストマイニングの手法について、技術的方法を整理し、次年度の研究・調査に活用する準備を進めた。 また、統合報告実務における非財務情報として、定性的記述に用いられる会計用語の特性について理解を深めるために、統合報告実務において高い頻度で用いられる「収益」という用語を分析した。第2年度・第3年度に提示した会計用語の起源特定化のための分析枠組みに基づき、その使用法の変遷に関する歴史的な分析を継続して行った。この調査結果は、非財務情報の特性を理解するうえで示唆を与えるものと期待される。研究成果は、以下の学会報告および論文において公表した(近刊を含む)。 (学会報告)日本簿記学会 2021年度 第37回全国大会 統一論題報告「会計基準と複式簿記―勘定の解釈をめぐって」報告・討論, 2021年8月28日・29日, 報告題目「会計基準の展開と会計用語の使用法 ー収益という用語をめぐる現状と課題」 (論文)川島健司(2022)「『収益』という用語は、なぜ定義が曖昧なのか」『會計』(巻, 号は未定)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大による2021年4月の緊急事態宣言の発出により、本務校において入構制限や対面講義の休講などの措置が講じられたことから、オンラインを利用した講義の準備と実施に時間を要し、これに伴い当初に計画していた本研究を一時中断および延期す ることを余儀なくされた。 本研究の具体的な課題は、日本企業の非財務情報は何がどのように開示されているか(開示実態の分析)、非財務情報の質はどのように評価できるか(質的特 性を評価する枠組みの検討)、日本企業の非財務情報の質はどの程度か(情報内容の評価)、日本企業の非財務情報は投資家に対して有用か(情報内容の有用性 の分析)、日本企業の非財務情報の内容と効果は、海外諸国と比較してどのような特徴があるか(開示実務の国際比較分析)を明らかにすることである。 昨年度に引き続き、日本企業の統合報告の実態を観察し、そこで開示される非財務情報の内容を基礎的データとして記述・整理するとともに、非財務情報の質を分析・評価する視点や枠組みの検討を試みている。しかし、基礎的データの収集作業は現在も継続中であり、上述の分析に移行できていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年4月において、新型コロナウイルス感染による行動制限は解除された。引き続き安全・安心確保に最大限努めながら、本研究を再開できる見通しである。具体的には、新型コロナウイルスの感染状況に応じた臨機応変な対応をとりながら、研究時間の適切なコントロールを中心とした活動方針を定め、引き続き本研究の活動に積極的に取り組む。 昨年度は、以前に検討・提示した会計用語の起源特定化のための分析枠組みに基づき、統合報告実務において高い頻度で用いられる「収益」という用語 について、その起源と使用法の変遷に関する分析を行い、当該用語が現在の財務報告実務でどのように用いられているかに関する分析を実施した。次年度では、これを統合報告の実務に分析範囲を拡張した調査を行う予定である。また、新型コロナウイルス感染症は、日本企業の統合報告実務にも影響を及ぼし得るものであり、本研究課題に関わる事例は分析の対象に含めていく予定である。 次年度は、本研究の最終年度となることから、これまでに調査した内容をまとめ、論文および学会報告を通じて積極的に発信することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した主な理由は、当年度に予定していた学会での研究報告を延期にしたため、その交通費などの費用を繰り延べたことによる。次年度以降の同学会での報告にかかる支出に充当する予定である。
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