研究課題/領域番号 |
18K01944
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
岡本 紀明 立教大学, 経営学部, 教授 (00433566)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 会計基準設定 / 会計基準の国際的統合 / 会計基準設定の政治的側面 / のれんの会計処理 / のれんの償却または減損 / 会計基準設定のレトリカルな側面 |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナ禍おける研究の遂行となったが、論文発表と学会報告をそれぞれ達成し、かつ現時点で2021年7月の国際学会報告(第13回学際的会計研究学会:主催はオーストリアのインスブルック大学で会議自体はオンラインで開催予定)がアクセプトされ、準備を進めている。 具体的な研究に関する動きとして、国際会計基準審議会(IASB)によるのれんの処理に関する会計基準設定が大詰めを迎えている。2020年3月にIASBにより公表されたディスカッション・ペーパーに対する利害関係者のコメントレターの受け付けが締め切られ、それらが審議会のウェブサイトで公表されている。現在はIASB内でそれらコメントレターの内容の分析及び対応が協議されている最中であると推察する。 実際、2020年度は公表済みのディスカッション・ペーパーにおける主張や論点を吟味するとともに、その後の協議の進行程度に加えて、各利害関係者のコメントレターの分析を行った。特に、いかなる利害関係者がコメントレターを送付したのかそ属性を分類し、数あるIASBからの質問事項のうち、のれんの償却もしくは減損に直接関わるものに注目し、いかなる主張が展開されているかカテゴライズした。その際特に注意したのは、本研究課題の特色でもある「説得」の視点からの論拠の分類及び分析である。単に既存のれんに対する減損アプローチに対する賛否だけでなく、それを支える主張の分類を試みた。ただしこの分類に関しては、今後さらなる精緻化が必要であると自覚している。国際学会報告に向けた査読を通じて、査読者からも「単にカテゴライズするだけではインプリケーションは限られている」と鋭く指摘されており、延長した2021年度において、研究の制度を高めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究当初はIASBの会計基準設定が2020年度にはほぼ完了すると見込んでいたが、予期せぬコロナ禍によりそれが想定より遅れ、結果的にコメントレターの募集期間も延長され、IASBのウェブサイトにおけるコメントレターの公表も予想していたよりは後に回った。その結果、本研究もコメントレターの分析及び研究の取りまとめのための時間を十分に確保できず、最終的には研究期間を延長するに至った。それでも最終的な成果物となった論文が、2021年7月開催予定の第13回学際的会計研究学会(Interdisciplinary Perspectives on Accounting Conference)に査読を経てアクセプトされたので、ある程度は意義のある研究が出来上がったのではないかと考えている。今後は報告におけるコメントやフィードバックを参考に、当該論文のクオリティを高めていき、知名度のある国際誌に投稿することを希望している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究成果のクオリティをさらに高めるべく、以下の2点を考えている。 まず第1に、会計基準セッターであるIASBとそれによる基準設定の影響を受ける利害関係者による「説得」に関する理論的枠組みの確立である。現在、レトリカルな制度論の分析視座を中心に据えようと考えているが、それをいかにコメントレターにおける主張やIASBの判断や基準設定の分類に落とし込んでいくか、さらなる検討が必要であると認識している。 第2に、IASBにより公表されたディスカッション・ペーパーに対するコメントレターの分析と分類を研究上いかに位置付け、その後のIASBによる最終的な基準設定と結び付けていくかのさらなる洞察も求められる。勿論、コメントレターだけが基準設定にとって大きな影響を及ぼすとは限らず、IASBのアウトリーチ活動や他国の会計基準セッターやグローバルな組織等への接触や意見交換などもある程度考慮しなければいけないと考えている。いずれにしても、研究の方向性や意義ならびに方法論的な点も全体的に考慮し、慎重に研究成果を取りまとめていく必要があるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度がコロナ禍により研究の進捗が予想通り進まず、最終的な研究の取りまとめが次年度にずれ込みました。繰り越し分は主に最終的な研究成果の取り纏めに用いる予定です。
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