最終年度は、第一に、隣接領域の文献レビューをもとに、アドバンストなサービタイゼーションに位置付けられるソリューション提供において、従来の製品開発・生産・販売におけるマス・カスタマイゼーションと類似した戦略・組織により、価値ベースの価格設定が可能になる収益の作り込み、コスト低減が可能になると論じた。一方、顧客との密な関係構築やトップの設定したリスク上限超過を防ぐため、ソリューションに特徴的な組織を採用している事例も明らかとした。また、ソリューションごとの収益・費用計画を期間軸で集計し、中長期利益計画とリンクさせる原価企画プロセスの適用可能性を論じた。そのほか、成果に対する契約においてはリスクへの対応が重要であること、相互関連性の高い製品・サービスの各構成要素への目標原価の配分について、諸藤(2020)で提案した修正QFD(An et al. 2008)を利用した目標原価配分に加え、PSSの議論を用いた方法が適用可能であることも述べ、学会報告を行った。第二に、原価企画的実務を行っている英国防衛調達の原価企画組織のレビューを行った。今後マルチプロジェクトにあたる原価企画のあり方を検討する予定である。第三に、提供サービスの種類、価格設定(収益の作り込み)、組織間連携等の実態と各要素の関係性を明らかにするための質問票調査を行い、単純集計とクロス集計を行った。今後、調査報告書を発展させ論文として成果報告予定である。 研究期間全体を通しての成果は、創造性と連携を促進する原価企画の要素に関し、管理会計学・心理学等隣接領域のレビューとそれを踏まえた製品を対象とした原価企画の事例分析を行ったこと、サービスもあわせて提供する製造業・英国防衛装備品における創造性と連携とコスト効率を両立する原価企画に関する文献レビューと質問票調査を行ったことである。これらにつき一部を除き論文・学会発表報告を行った。
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