研究実績の概要 |
本研究は、我が国の製造企業のコスト競争の優位性を支えていた原価企画はどのような状況(企業環境、事業戦略、製品アーキテクチャ等)のもとで有効に機能を発揮するのかという研究課題を理論的に考察し、仮説を導出し、質問票調査、インタビュー調査を通じて明らかにすることを目的とした。 2019年度は、2018年度に行った研究成果を英語論文(Nobumasa Shimizu, “Target Cost Management was Japan’s Force: What happened,” China Management Accounting Review, 9(3), 2019, p.114-121.)にまとめた。具体的には、過去の実態調査・事例研究を分析して、原価企画が適合する製品の特性とコモディティ製品の特性との違いを分析したものである。 また、2018年度において精緻化した仮説に適合する事例を探求した。モジュール型製品のコストマネジメントの実態を調べるために、消防関係車両を設計・製造・販売するN社に2019年6月から7月にかけて3度インタビュー調査を行った。そこでは原価企画的なコストの作りこみはあまり重視されていなかった。とはいっても、大量生産と規模の経済を主としたコスト戦略を重視しているとも言えなかった。そこでは、顧客(地域の自治体)のニーズの多様性に適合した消防関係車両の設計・製造を重視し、コスト低減が重視されているわけではなかった。さらなる調査が必要であるがこの観察結果から、製品の製造・設計においてコストマネジメントの重要性の程度が異なることがわかった。この点を考えながらアンケート調査の質問票を作成する必要がある。
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