研究課題
本研究は、我が国の製造企業のコスト競争の優位性を支えていた原価企画はどのような状況(企業環境、事業戦略、製品アーキテクチャ等)のもとで有効に機能を発揮するのかという研究課題を理論的に考察し、仮説を導出し、仮説を検証することを目的とした。2023年度においては、自動車産業における電気自動車とハイブリッド車とを巡る世界的な競争のケースで仮説を検討することとした。電気自動車メーカーの競争は、アメリカテスラと中国メーカーとの戦いを主軸として展開されている。モジュール製品である電気自動車はコモディティ製品の競争の様相を呈している。自動車市場では、ガソリン自動車、ハイブリッド自動車、そして電気自動車へと移行するという前提のもと、電気自動車の自動車市場でのシェアが急激に増えるという見込から、テスラと中国自動車メーカーが大規模な設備投資をして、とにかく安い原価で電気自動車を大量に生産して、電気自動車のシェアを増やそうという戦略をとっている。したがって、電気自動車メーカーの競争は、規模の経済を利用した量産効果主体の戦いである。それに対して、トヨタのハイブリッド車はガソリン車の良い点と電気自動車を組み合わせた製品であり、基本的に摺り合わせ型製品である。また、ハイブリッド車は差別化可能な製品であり、多種多様な製品の提供が可能である。それには原価企画が適合している。こういったことから、ハイブリッド自動車の戦いになれば、トヨタが原価企画を使いながら、大量生産できる。しかし、電気自動車が消費者に受け入れられそのシェアが一気に増えるようなことになるならば、電気自動車メーカーが有利になるだろう。
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経営経理研究(拓殖大学経営経理研究所)
巻: 125 ページ: 83-93頁
Eri Yokota Edit, Frontiers of Japanese Management Control Systems:Theoretical Ideas and Empirical Evidence
巻: - ページ: 70-93