研究課題/領域番号 |
18K01949
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
田代 樹彦 名城大学, 経営学部, 教授 (90268061)
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研究分担者 |
田澤 宗裕 名城大学, 経営学部, 教授 (80411487)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 業績予想 / 利益予想 / 四半期財務報告 / 修正行動 / 予想誤差 |
研究実績の概要 |
2019年度は、2018年度から整備を続けていた経営者の業績予想情報の修正行動の分析に必要な業績予想情報、業績予想の修正情報、業績の実績情報等のアーカイバルデータを用いて、分析を行った。具体的には、本研究プロジェクトに先立つ田澤・田代(2015)で明らかにされた業績予想のうち利益予想について、修正パターン、修正開示のタイミング、修正回数に関する発見事項をより精緻に分析するために、さらに修正率、実績値との差異(予測誤差)など、経営者の利益予想情報の修正の特性について、さらに分析データを収集する対象期間を広げて分析を行った。 その結果、日本企業は、決算発表日に予想情報の公表が実質的に強制されていることにより、企業の適時開示が促進されること、すなわち、経営者は、決算開示のときに、ルールで開示が要求されている水準よりも低い水準でも積極的に修正情報を開示していることを発見した。さらに、低い水準で修正がなされた予想利益と実績値との誤差は相対的に小さくなっており、このような小刻みに行われる開示行動を促す現行の仕組みは、経営者の的確な見込み利益の把握に繋がることも明らかになった。 このことは、業績予想の開示を実質的に強制することに対しては産業界から批判もあるものの、企業はこの制度を与件として、情報開示の遅延によるペナルティを避けるためにも、最適な情報開示戦略をとっていることを示唆していると考えらる。 以上の成果の一端は、学術誌に投稿するとともに、学会にて報告を行った。 なお、学術誌への投稿は、本報告書の作成中の2020年5月9日にエディターより採択の旨の連絡を受けたため、2020年度以降に正式に公表される予定である。(採択時点が2020年度のため、2019年度の成果としては記載していない。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度にやや遅れていた本研究プロジェクトであるが、2019年度には研究成果の一端を学会報告や学術誌への投稿という形で公表を進めており、研究成果のとりまとめと公表は概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初の研究計画に沿って、経営者の業績予想情報の開示が実質的に行われているという日本の独自の制度的枠組みにおける経営者の修正行動の特性の分析をさらに精緻化させていくことを予定している。 しかし、この分析は、ある意味平時の状況を想定している。本報告書作成時点においても、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために求められている我々の行動変容が企業業績に大きな影響を及ぼし、先が見通せない状況となっていることから、業績予想の開示自体を取りやめる企業が増えている。このような平時とは言えない状況に見られる行動は、2011年の東日本大震災の時も同様であったので、この観点を研究の推進に当たってどのように評価し、分析に取り入れるべきかの検討が必要になっていると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費と旅費について大きな差異が生じているが、その理由と2020年度の使用計画は以下の通りである。 物品費については、2019年度末にデータベースの更新を行う予定であったが、購入時期をずらすことによって、同じ価格でより長い期間のデータが利用できるため、基金によって執行時期を2020年度に繰越すことが可能なため、その更新を見送った。よって、2020年度にその執行を行う予定である。 旅費については、研究成果のとりまとめがすすんだ2020年2月から3月にかけて、内外の学会・ワークショップに参加・報告する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から参加を見合わせたために、執行ができなかったためである。この点については、本報告書作成時点では予断を許せないものの、適宜、内外の学会・ワークショップ等で報告等を行っていくことを計画している。
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