研究課題/領域番号 |
18K01954
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
松本 祥尚 関西大学, 会計研究科, 教授 (30219521)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ネットワーク・ファーム / 監査法人 / 監査の品質 / 品質管理 / 共同監査 / グループ監査 / シェアード・サービス |
研究実績の概要 |
「多国間にわたる監査業務の保証水準確保のための品質管理に関する国際的・実証的研究」をテーマとして、制度的・実務的観点を押さえつつ、多国間に跨るネットワークや共同事務所に所属する監査事務所の監査業務の品質管理が一定の保証水準を達成するために、どのように規制され、整備・運用されるべきか、を理論的に解明することを研究目的とする。 わが国大手・準大手監査事務所が所属するネットワーク(PwC、KPMG、EY、DT、GT)や共同事務所によって、それぞれの国の監査事務所に対する品質管理がどう維持・向上されているのかを研究対象とすることは、わが国では初めてのことである。このため、監査業務に対する国別の明示的な規制とは別に存在する、黙示的規制としてネットワークや共同事務所の内部規制の内容を検討し、規制当局や自主規制機関が設けるべき品質管理規制の在り方を明らかにする必要がある。 ネットワークに所属する監査事務所側でも、監査の品質を維持・向上させるための品質管理の方針と手続を定めて運用しているとともに、ネットワーク側でもネットワーク全体の監査の品質を確保するための措置を講じている。このような品質管理の方針と手続が大きな効果を顕在化させるのが、グループ監査の局面である。 このため透明性報告書や監査の品質に関する報告書等の公表資料と聞き取り調査から、ネットワーク・ファームとしての(1)ガバナンス、(2)監査業務の品質管理、(3)グループ監査、(4)人事管理・シェアードサービスについて、具体的内容を取りまとめた。その上で(3)グループ監査特有の論点を、追加的な調査によって明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネットワーク・ファームに所属してる監査事務所が、監査の品質を維持・向上させるために監査事務所内独自の品質管理の方針と手続以外に、ネットワークから品質管理を目的にした手続を講じている。これらの内容について、各監査法人及び各ネットワークが公表している品質管理報告書を入手・把握すると同時に、調査協力を得た各監査事務所において聞き取り調査を行なうことができた。 公表資料及び聞き取り調査によって入手した各ネットワーク・ファームのガバナンスの在り方とネットワーク内品質管理の態様を一旦研究報告としてまとめ、日本監査研究学会課題別研究部会において報告を行なった。その後、ネットワーク・ファーム内品質管理に関する調査報告書で不足する争点、すなわち海外子会社・海外孫会社・海外関連会社向けにネットワークの品質管理がどのように貢献しているのか、を追加調査し、研究報告として取りまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
国際監査・保証業務基準審議会(IAASB)による監査事務所の品質管理(ISQM 1とISQM 2)の基準化ならびにグループ監査(ISA 600)の改訂が進んでおり、これまでに把握したネットワーク・ファーム内監査品質管理の方針と手続にどのような影響が生じるのかを明らかにする必要がある。 このため、制定・改訂作業中のISQM 1、2、ならびにISA 600の制定・改訂内容の情報を集めるとともに、ネットワーク・ファーム内品質管理にどのような影響を与えようとしているのかを分析したい。その上で、ネットワーク・ファームに所属する監査事務所による監査品質の管理について、どのような内的・外的規制が可能となり得るのか、を検討する予定である。
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