監査の品質管理に関する基準の設定機関である監査・国際業務基準審議会(IAASB)会合における数度にわたる国際品質管理基準(ISQM) 1と 2、ならびに国際監査基準(ISA) 220の改訂に係わる会合に参加することで、企業グループの財務諸表監査に対する品質管理上の問題に関する議論を聴取すると同時に、改訂・新設のための議事資料を入手・検討した。ここで把握された監査基準改訂・新設の内容が、監査の品質向上に及ぼす効果を分析し、わが国監査基準等に及ぼす影響を検討した。その結果、IAASBの基準改訂に係わる方針や各国からの意見を収集して持ち帰り、現在、わが国の品質管理基準改訂作業に反映することができている。 多国間に跨がる監査事務所のグローバルなネットワークによる品質管理の方法や内容について、PwC、KPMG、DT、EY、それぞれのネットワーク内でわが国所在事務所に対する品質管理の実態について明らかにした。具体的には、各ネットワークともメンバー・ファームから法律上、独立した別の組織体として統括本部を設け、各メンバー・ファームとメンバーシップ契約を締結している。しかし当該統括本部は、あくまでも登記上の組織であり実態的な事務局機能を有しているわけでもなく、また監査等の業務提供も行なっていないことが確認された。従って、各メンバー・ファームに対するガバナンスは、グローバル・ネットワークの代表者からなる評議会が担っていた。 グローバル・ネットワークによる各メンバー・ファームに対する関与の代表的な実例として、「監査上の主要な検討事項(KAM)」を採り上げ、それぞれのグローバル・ネットワークによってKAMを監査報告書に記載する方針の違いがあることが判った。
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