研究課題/領域番号 |
18K01957
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
藍澤 淑雄 拓殖大学, 国際学部, 准教授 (20722317)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 零細鉱業者の多様性 / 地域とのかかわり / 地域への定着 / 社会的利益 / 定住・非定住者 / 専業・兼業鉱業者 |
研究実績の概要 |
本研究はアフリカ農民が零細鉱業に従事する社会的決定要因を明らかにすることを目的としている。2020年度は、過年度にタンザニア国のゲイタ県ならびにムボメロ県で社会調査を通じて収集したデータに加えて、オンラインで収集した補完データ・資料をもとに分析をおこない、その結果をもとに成果を取りまとめる作業を行った。 2020年度は、主に零細鉱業者の地域への定着と採鉱地の周辺コミュニティとの関係に着目し分析作業を進めた。その結果、①零細鉱業者が地域に定着しているほど、採鉱場を含むより広域な地域社会のなかで暮らしているという傾向、ならびに②零細鉱業者が地域に定着していないほど、採鉱場というより閉鎖的な社会的関係のなかで暮らしているという傾向がさらに明確に見えてきた。①の地域への定着という視点においては農業への従事と農地の利用が地域へのかかわりを強めている点が明らかになった。特に採鉱作業者として地域に移り住みそのまま定着した者については、農地が利用できる状況に至るまでに地域の人々とのつながりを強めてきた可能性や農地が利用できるようになってからも地域農民とのつながりを強めた可能性が示唆された。②については採鉱地を渡り歩く独身の専業採鉱者にその傾向が強くみられる点が明らかになった。こうした専業採鉱者は採鉱石を買い付けるブローカーから生活費の支援を受けていることが多い。また採鉱者同士で独自のファンドを立ち上げながら相互に支えあっている例も見られた。以上の結果は、論文として取りまとめ刊行するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度の作業は遅れている。最も大きな原因は、本研究で情報収集の基盤となる社会調査が実施できなかったことである。そもそも本研究はタンザニアの零細鉱業の採鉱現場で社会調査を行うことを前提に計画されたものであった。他方で新型コロナウィルス感染拡大の影響は想定以上となり研究を進めるうえで大きな足枷となっている。当初計画していた2020年8~9月の渡航は延期となり、2021年2~3月の渡航もさらに延期せざるを得ない状況となってしまった。この判断は海外渡航自粛の所属機関の方針に基づきながら、タンザニアで新型コロナウィルス感染拡大防止対策が十分に行われていない可能性も視野に入れ検討をおこなった結果であり、極めて残念と言わざるをえない。したがって2020年度は既存の収集データならびにオンラインによる関係者から収集した情報をもとに成果を取りまとめるという選択をした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は少なくとも二つのパターンを想定して研究方針を立てる。 まず楽観的な展望に基づき、年度後半にタンザニア渡航が可能になるというパターンである。この場合は、2020年度にできなかったタンザニアでの追加調査を行う。特に採鉱地で採鉱活動をするモビリティの高い零細鉱業者が、採鉱地以外(特に出身地)で暮らす家族とどのような関わりあいをもっているのか、採鉱地以外の家族とどのような相互の支えあいをおこなってるのかなどについて調査する。 つぎに現実的な展望に基づき、年度内にタンザニア渡航が実現できないパターンである。この場合は、オンラインで可能な限りの情報収集を継続しながら、これまで続けてきたタンザニアの零細鉱業における社会構造について明らかになった点とその成果を、総合的な視点からメタ分析する。そのうえでまとまった形での成果物として取りまとめる作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響で本研究における調査対象地のタンザニアへの渡航が困難となり次年度使用額が生じた。所属機関の海外への渡航自粛の方針、ならびにタンザニアで感染拡大防止対策が徹底されていない可能性に鑑み、本研究の調査対象地への渡航が困難と判断した。
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