本研究はアフリカ農民が零細鉱業に従事する社会的決定要因を明らかにすることを目的としてきた。2023年度については、タンザニアのムボメロ県を対象として零細鉱業者の生計維持と採鉱資源の選択の関係性について明らかにすることを目的とした研究を進めた。採鉱資源の選択に関しては、希少性の高い鉱石と希少性の低い鉱石に着目し、零細鉱業者が、それらの鉱物資源採鉱を選択する背景要因を明らかにすることを目標とした。そのために希少性の高い鉱石採鉱者については金鉱石採鉱者、希少性の低い鉱石採鉱者については建設用のグラベル採鉱者を対象として比較分析した。2023年末までに明らかになった分析結果については、内容を再精査したうえで、2024年度中に専門学術誌に投稿予定である。 なお、2023年度末までの研究期間全体で公表した成果としては、1) 採鉱場のある村(以下、採鉱村と呼ぶ)の出身とモビリティの比較的高い採鉱村外出身の零細鉱業者が存在することに着目し、零細金鉱業が果たす経済的役割と社会的役割の接続の違いについて明らかにした学術論文、2) 零細鉱業者の地域への定着度の違いに着目し、定着度が高いほど、採鉱場を含むより広域な地域社会とのつながりの中で生活をしており、定着度が低いほど、採鉱場という閉鎖的な社会的関係の中で生活しているという点を明らかにした学術論文がある。1) と2)の成果については、それぞれ2019年と2021年に専門学術誌にて公表した。加えて、3)本科研費助成事業による以上の2点の成果、ならびに2015年から2018年度の科研費助成事業による成果の全体を取りまとめた学術書も出版した。
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