研究課題/領域番号 |
18K01961
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鶴巻 泉子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (70345841)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カタルーニャ / ナショナリズム / ムスリム移民 / 人種化 |
研究実績の概要 |
本研究はスペインとフランスにまたがる二つのカタルーニャ地域を例に、北アフリカ出身の移住者やその子孫に対する「宗教的人種化」のメカニズムとその規定要因を比較するものである。異なる国家に属しつつも共通のナショナリズム「カタルーニャ主義」を持つ両地域において、宗教的要素を通じた他者化のプロセスが、国家ナショナリズムと対抗ナショナリズム、そして両者の紛争的関係とに規定される様式に着目する。 コロナ禍により現地調査が不可能な状況が続いているため、本年度は文献資料や統計資料を用いた分析を続けるとともに、フランス側を考察の中心とし、すでに行ったフィールド調査地における地域的分脈の検討を受けて今年度はナショナルな文脈に絞った検討を行った。フランスでは2015年の同時多発テロの影響や「インターセクショナリティ論争」を背景に、「イスラム」「ムスリム」をめぐる研究が近年爆発的に増加、社会と宗教の関わりをめぐる研究内容が刷新されつつある。そのため先行研究を新たに整理する必要も生じた。①計量的差別分析アプローチ②国家による制度的レイシズムアプローチ③生きられた経験アプローチの3つに分類し、その問題意識と方法論、射程などを比較検討し、注目を集める①の研究が「宗教」ファクターの自律性に議論を絞る傾向があること、しかし計量的手法を用いて抽出した 「宗教」は概念上にのみ存在し、社会学的時現実と乖離することを指摘した(:鶴巻泉子「2000年代以降のフランスにおける『ムスリム差別』研究と『ムスリム』概念」(投稿準備中))。このような宗教ファクターの自律性をめぐる議論はフランス社会の大きな特徴でありイスラム論争を大きく規定することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究が分析対象とするフランスとスペインでは2021年度 も引き続きコロナ禍の影響を大きく受け、現地調査は不可能な状況だった。インフォーマントとのコンタクトを保ちつつ、近年の大幅に増加したイスラムをめぐる議論整理と、当初の研究計画にはなかった歴史的文脈の検討を続行している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は上記の歴史的文脈の比較を両国間で最終的に行う。現在行っている時期区分に関して、両国では大きな隔たりがあるため、その調整をしつつ比較の土俵を確定する必要がある。 また2022年度は最後の現地調査を実施する予定であるが、コロナ禍のために調査期間がかなり絞られてしまったため、調査対象機関を行政と2,3のアソシエーションに絞ることを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染状況が好転しなかったためにフランスとスペインで予定していた現地調査が実現できなかったため。
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