研究課題/領域番号 |
18K01962
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
岩佐 卓也 専修大学, 経済学部, 教授 (00346230)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 労働協約 / ドイツ |
研究実績の概要 |
今年度は「ドイツ労働協約システムにおける産業部門 : 長期契約型ロジスティクスに着目して」(『日本労働研究雑誌』2022年6月号)を発表した。 本稿は、ドイツの労働協約システムにおける産業部門の再編について、長期契約型ロジスティクスの事例に着目して分析を行った。ドイツにおいて多くの労働協約は産業部門を単位としている。そのうち最大のものである「金属・電機」部門(自動車製造、機械製造、電機製造など)においては、IGメタルとゲザムトメタル傘下の使用者団体を協約当事者とする横断的労働協約が締結され、これが相対的に高い水準の労働条件を規制してきた。しかし、メーカー企業が従来の直接雇用に代えて、長期契約型ロジスティクスを外部企業にアウトソーシングする傾向が続いている。長期契約型ロジクティスクとは、旧来の倉庫管理・輸送業務に加えて、検査・品質管理、準備組立などを長期契約によってメーカー企業に提供する業務である。このアウトソーシングにより、これまで金属・電機部門の労働協約によって規制されていた範囲は縮小する。これに対してIGメタルは、アウトソーシングされたロジスティクス企業において従業員を組織し、企業協約を締結する運動を展開している。たしかに金属・電機部門の範囲を復元することは実現していない。しかし、これらの従業員を金属・電機部門から排除することによるコスト上のメリットは、IGメタルの対抗戦略の結果、相当の制約が課された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究申請時にはドイツでの現地調査を行う計画であったが、コロナ禍のため、大幅に研究計画を修正せざるをえなくなった。研究申請時にはドイツでの現地調査を行い、それを踏まえて労働条件規制の理論的検討を行う計画であったが、コロナ禍のため、大幅に研究計画を修正せざるをえなくなった。すなわち、文献資料を中心として、ドイツの労働条件規制に関わる諸動向について検討を行い、それらを素材としつつ、労働条件規制の現代的諸条件を明らかにする研究計画へと変更した。 2022年度までに、日本における企業横断的交渉の実態、コロナ危機に関するドイツでの論状況、コロナ危機下のドイツ食肉産業における新たな労働条件規制の 動向、ドイツ労働協約システムにおける「産業部門」の動向、について研究を行った。その後、ドイツの法定最低賃金と労使関係について、国際比較を踏まえた研究を進めている。 これらの研究を通じて、制約があるなかで、労働条件規制をめぐる新しい論点を呈示すことに一定貢献できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、研究申請時にはドイツでの現地調査を踏まえて労働条件規制の動向を分析する計画であったが、コロナ禍のため、大幅に研究計画を修正せざるをえなくなり、そのため文献資料を中心として、ドイツの労働条件規制に関わる諸動向についての研究へと研究計画を変更した。今後もそれを継続してゆく予定である。2022年度までに、日本における企業横断的交渉の実態、コロナ危機に関するドイツでの議論状況、コロナ危機下のドイツ食肉産業における新たな労働条件規制の動向、ドイツ労働協約システムにおける「産業部門」の動向、について研究を行っており、制約があるなかで、労働条件規制をめぐる新しい論点を呈示することに一定貢献できたと考えている。 その後、ドイツの法定最低賃金(以下、最賃)と労使関係について、国際比較を踏まえた研究を進めている。今日、世界的に低賃金労働が拡大するなか、最賃の役割が注目され、その新規の導入や水準の引き上げが相次いで行われている。最賃と労使関係の相互関係である。低賃金労働に対しては、最賃(法律)による規制と、労使関係(労働協約)による規制がある。両者の関係をどのように理解し、制度上・運用上位置づけるかは、国やアクターによって様々である。一方では最賃と労使関係の緊張関係が、他方では補完関係が問題となる。また、多くの国では最賃水準の決定において審議会等を通じて労使団体が関与している。しかしその自律性や政府・議会の関与は各国で異なり、かつ変化している。こうした問題状況のなかでドイツはきわめて注目すべき位置にある。 2023年度中にこのテーマについての学会報告と論文発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究申請時には調査旅費として計画していた分が、コロナ禍のため使用できなかったため。
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