本研究は高知県が展開する集落活動センター(以下、センター)の機能強化と過疎地域の持続可能性について、雇用創出と若者の定住の視点から分析しようとするものである。 過去の科研費研究の結果から、センターとセンターを構成する集落(構成集落)との関係については、主体的に取り組んでいるとはいえず、センターは地域の現状維持には寄与しようとしているものの、積極的に雇用を創出し、若者の定着を図る拠点として機能しているとはいえなかった。 そこで本研究では、若者の地域定住に関する価値観を把握するとともに、過去の地域おこし協力隊(以下、協力隊)がセンターとどのように関わってきたのかを掘り起こすとともに、現在活動中の協力隊の意識についても分析することにした。2020年に高知大学生を対象にしたアンケート調査を実施したところ、高知県で生活をする大学生は「大都市」よりも「地方都市」での定住を志向していることが明らかになった。しかし、「田舎」にあるセンターへの認知度は低く、またセンターが「起業」の拠点として機能しないと考えていることがわかった。2022年には高知県の全市町村を対象にアンケート調査を行い、センターの政策的取り組みと、過去の協力隊の定着実態についてデータを収集した。また、現在活動中の協力隊全員にも定住意識についてアンケート調査を行った。その結果、センターと協力隊との関わりは薄く、行政が積極的に関わらせていない実態が明らかになった。また、行政はミッション型の方が定着率が高いと考えているものの、実態にはミッション型とフリーミッション型に差はみられなかった。加えて、定着には住居や仕事の要因に加えて、コミュニティとの関わりが定着を決める要素の一つになっていることも明らかになった。これらの研究結果については、『Collaboration』で公開した。
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