研究課題/領域番号 |
18K01965
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大森 久光 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (70271442)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 労働生産性 / 病欠 / 慢性閉塞性肺疾患 / 気流閉塞 / 呼吸機能 / プレゼンティーズム |
研究実績の概要 |
本研究は、呼吸機能低下(気流閉塞=慢性閉塞性肺疾患:COPD疑い)と労働生産性低下(presenteeism)および病欠(absenteeism)との関連を明らかにすることを目的とする。労働生産性については、健診受診時に男女労働者を対象として、The Quantity and Quality (QQ) methodと日本開発のプレゼンティーズム測定調査票:労働機能障害調査票(WFun)の2つの労働生産性低下の指標を用いて評価する。さらに、追跡調査を行い、将来の労働生産性低下を防止するための介入方法を検討する基盤となる研究を行う。 初年度は、倫理委員会での承認後に、協力機関の状況も考慮し、2019年2月に887名、第2年度は6月~9月の期間に約6000名のリクルートができた。リクルートした対象者の人間ドックデータ:問診情報[既往歴および現病歴(労働生産性低下をもたらす 主要な健康問題について)、生活習慣[喫煙習慣、食習慣、運動習慣、睡眠時間等]、職場要因[職場の禁煙状況、受動喫煙の有無、労働時間、上司のサポート状 況等]、身体測定、血液検査および呼吸機能検査(1秒量:FEV1、努力性肺活量:FVC、対標準1秒量:%FEV1、1秒率:FEV1%、健診では可逆性試験なし)を第2年度から第3年度にかけて順次抽出を行った。すでに回収した調査票の記載事項[労働生産性(presenteeism)の評価としてのQQ method、WFun、および病欠(absenteeism):過去1年間の病欠日数(なんらかの健康問題で就業できなかった日数)]を順次エクセルに入力をおこなった。第3年度にエクセル上で順次データの突合を進めており、最終年度に呼吸機能との関連性について検討する予定である。また、追跡調査として、協力機関において可能な期間に追加の調査を行ない、経年変化の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象者のリクルートのためには、協力機関の協力が不可欠である。そのため、研究実施にあたっての環境整備[質問票の内容、必要検査項目、提供の必要な データ、研究協力者への説明と同意、研究に要した経費の請求、等]に時間を要したが、健診機関の協力のもと限られた時期ではあるが、全体で約6900名をリクルートすることができた。回収した質問票のデータ入力および人間ドックデータの抽出およびその突合を順次おこなっている。数が膨大なため時間を要しているが、解析に向けためどがたってきている。
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今後の研究の推進方策 |
リクルートされた対象者に関しては、本研究で測定した労働生産性と提供されたデータ(既往疾患および治療中疾患、生活習慣(喫煙習慣等)、測定項目として身長、体重、体脂肪率、腹囲などの体型因子、血圧、呼吸機能検査および血液検査全般(特に炎症のバイオマーカー:WBC、CRP等)、画像情報としての胸部X 線所見、CT所見等)を順次突合を開始しており突合の完了を目指す。現在、呼吸機能とこれらの労働生産性および病欠との関連について検討している。労働生産性低下をもたらす主要な健康問題として考えられる筋骨格系疾患、消化器疾患、 循環器疾患、精神疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、癌、呼吸器疾患(COPD以外)、脳梗塞、メニエール、頭痛、めまい等の疾患、および生活習慣 (喫煙、食生活、労働時間、睡眠時間等)、職場の喫煙環境等を問診情報より把握し、それらと労働生産性および病欠との関連について同様に検討する。また、 労働生産性低下をもたらす主要な健康問題と考えられる呼吸機能低下以外の上記疾患を除外し、気流閉塞の有無および重症度と労働生産性低下および病欠との関連について、多重ロジスティック回帰分析等を用いて検討する。ジェンダー(性別)、生活習慣、業種、職種、職場要因等を考慮して解析する。研究期間内の分析完了を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行(対象者のリクルート)のためには、呼吸機能検査を含む健康診断を実施している健診機関の協力が不可欠である。初年度、研究対象者のリクルートのための環境整備(協力機関での準備等)に努めたが、時間を要しリクルート開始が2月となった。第2年度は協力機関の協力可能であった最大期間の6月から9月にリクルートができたが、対象者から得られた質問票のデータ入力および呼吸機能検査を含む健診データの抽出に時間を要した。これらの理由により、次年度使用額が生じたが、第3年度にかけてリクルートした対象者から得られた質問票のデータ入力および呼吸機能検査を含む健診データの抽出を順次行いデータの突合を行っている。より充実した研究成果を得るために、研究期間の延長申請を行い承認いただいた。最終年度に協力機関において可能な期間に追加の調査および追跡調査を行ない、経年変化の検討も行う予定である。これまでのデータの入力、突合、解析等およびさらなるリクルートのための人件費・謝金、物品費または情報収集としての旅費等の必要な経費が次年度使用額となる予定である。これらの理由により、次年度使用額が生じたが、最終年度に解析等を終了することを目標として研究を遂行する予定である。
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