研究実績の概要 |
本研究では、呼吸機能低下(気流閉塞=慢性閉塞性肺疾患:COPD疑い)と労働生産性低下(presenteeism)および病欠(absenteeism)との関連を明らかにする。The Quantity and Quality (QQ) methodと日本開発のプレゼンティーズム測定調査票(WFun)の2つの労働生産性低下の指標を用いた。 人間ドック受診男女労働者を対象として、2019年度までに3,703名、2021年度に4,115名をリクルートした。人間ドックデータ:問診情報[既往歴および現病歴(労働生産性低下をもたらす主要な健康問題について)]、生活習慣(喫煙習慣、食習慣、運動習慣、睡眠時間等)、職場要因(職場の禁煙状況、受動喫煙の有無、労働時間等)、身体測定、血液検査および呼吸機能検査(1秒量、努力性肺活量、対標準1秒量、1秒率)を抽出し調査票(QQ method、WFun、病欠等)を入力し突合した。無職、主婦、呼吸機能未受診、質問未回答、うつ病、精神、アレルギー、肺がん等呼吸器疾患、脳血管、心疾患等、めまい、頭痛等労働生産性に影響をおよぼすと考えられる疾患を除外。最終解析対象者は2019年1,860名(男性1,182名、女性678名)、2021年2,367名(男性1,431名、女性936名)。新型コロナ感染症蔓延の影響を考慮し2019年と2021年を分けて解析した。QQ method(量、質、効率)、病欠およびWFunと呼吸機能との関連は多重ロジステック回帰分析(性、年齢、BMI、喫煙、高血圧等疾患、睡眠時間、労働時間で調整)を行った。 2019年までの解析では、気流閉塞中等度以上の群では、呼吸機能正常群と比べて、有意に労働生産性(量)の低下との関連[OR(95%CI):1.82(1.05-3.15)]を認めた。労働生産性の他の指標との関連は認めなかった。2021年度の解析ではいずれの指標ともに有意な結果を得ていない。新型コロナ感染症蔓延の影響については今後の課題である。
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