研究課題/領域番号 |
18K01969
|
研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
山田 信行 駒澤大学, 文学部, 教授 (80287002)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 資本主義 / 移行 / 労使関係 / ポスト資本主義 / 互酬性 / モラル・エコノミー |
研究実績の概要 |
本年度については、コロナ禍において停滞していた海外における研究を再開することができた。ハーバード大学において、本務校から在外研究の機会を与えられたことによって、これまでの研究を著作としてまとめる作業を集中的に行うことができた。具体的には、そこでは、日本を事例にして、労使関係において「モラル・エコノミー」と「互酬性」が“再現”され過程を歴史的に跡づける作業を行った。 そもそも、この研究プロジェクトの目的は、資本主義の普遍性を明らかにするとともに、それをふまえて「ポスト資本主義」を展望することであった。資本主義への移行の普遍性は、そもそも前資本主義社会において種差的な互酬的関係が資本主義に移植され、そのことを通じて労働者に転換した生産者たちが資本主義を受容することによって実現しうる。換言すれば、前資本主義的社会関係が解体されることなく、資本主義への移行が終了しても存続することが重要である。 こうしたリーディング・アイデアに基づいて、日本における労使関係の展開を描くとともに、1960年代後半以降に成立した「企業社会」において、「モラル・エコノミー」と「互酬性」とが確立したことを明らかにした。さらに、1990年代後半以降においては、「企業社会」の解体とともに「モラル・エコノミー」と「互酬性」も失われていることも指摘した。カール・ポランニーの主張に依拠するならば、こうした状況は、社会の解体をもたらすことになる。市場交換ばかりが優越する資本主義にとって代わる「ポスト資本主義」社会は、あらたな「互酬性」原理に裏付けられた社会となることを展望している。「ポスト資本主義」への展望として、現代の日本社会においては、「ワーカーズ・コレクティブ」などがあらためて注目される必要があることも指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間を延長したことによって、研究の最終的なまとめを行うことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後については、著作の刊行を模索するとともに、潜在的な比較の対象として念頭においているアメリカ社会を事例にした経験的・理論的研究を行うことを構想している。具体的には、10年ほど前に調査を行っていたアメリカ西海岸(サンフランシスコ・ベイエリア)において、移民コミュニティの歴史と移民の生活史を研究することによって、日本とは異なる、資本主義における「モラル・エコノミー」と「互酬性」のありかについて明らかにすることを目指したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による研究の停滞に伴う資金余剰。今年度中に、著作をまとめる際の追加文献・資料の購入・入手にあてる予定。
|