研究課題/領域番号 |
18K01972
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
尾崎 寛直 東京経済大学, 経済学部, 教授 (20385131)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 災害復興 / レジリエンス / 支援 / 受援力 / 地域再生 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究の2年目として、フィールドワークとして主に「火山災害」(三宅島、雲仙島原)、「社会的災害」(原爆被災の広島・長崎、大気汚染災害の川崎・大阪)の継続的な現地調査を進めつつ、それまでの現地ヒアリングと資料収集によって得た情報の整理とスクリーニングを行ってきた。その結果の一部は、年度内にいくつかの論文として成果発表することができた。 とくに災害発生後の<支援>という観点でいえば、発生時期によって規模も広がりも大きな違いが確認できた。自治体同士の応援協定等の支援は各種災害の経験が増えるにしたがって格段に進歩してきており、ノウハウの継承も進んできている。何よりかつて自ら災害を経験した地域の自治体職員やボランティアが次の災害発生地域に進んで応援・協力に参加し、経験を伝える媒介者の役割を果たしている側面があり、この点はさらにその意義を追究する必要がある。 また、課題の整理の過程で見えてきたことは、被災者の支援にあたる専門職の役割の重要性である。今でこそDMATをはじめとした医療専門職、さらに福祉専門職の災害派遣が定例化し、重視されているが、そこに至るまでの過去の災害では現場でのさまざまな混乱や葛藤が生じていたことも確認できており、今後さらに追究する必要がある。ただし社会的災害においては、人為的な環境破壊によってさまざまな困難な状況に置かれた被害者の問題を解決する上で(被害の防止や被害者の救済等を含む)、有効な援助はもとよりアセスメントの面からも福祉専門職者によるソーシャルワークが大きな役割を果たしたということは稀有であった。この点はすでに論文でも一部言及したが、今後さらに実態把握を深めていきたい。 以上のことから、調査から得られた情報のスクリーニングと分析によって課題とすべきいくつかの比較指標が見えてきており、今後の目標はクリアになってきていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績のところで述べたとおり、年度前半を中心に当初の予定した現地調査等を順調に進めつつ、そこから課題の抽出ができてきていると考えている。 ただ、今年度末に関しては、コロナウィルス感染症蔓延の影響により、大学研究者の「かき入れ時」(春休み)でもある2月後半以降、地方出張はもとより対面型のヒアリングも含めた調査が不可能になってしまったことは、研究の進捗に関してブレーキとなったことは否めない。実際、当初の予定では津波被災地域、新潟等の震災地域をこの時期に重点的に調査する予定だったが、順延とせざるを得なかった部分がある。 以上の点から、年度後半に遅滞し部分はあるが、全体としては「おおむね順調」という自己評価とさせていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の令和2年(2020年)度は、上記コロナウィルス感染症の影響が当面夏までは続くことが予想される。勤め先の大学でも少なくとも6月末までは地方出張などは一切禁止されている。また、それ以降も感染の拡大している東京から地方への出張は抑制的にならざるを得ない側面もある。そのようなことから、まずは現地調査の予定は可能な限り年度の後半にずらしつつ、状況の変化(再自粛の社会的要請など)によっては次年度に現地調査の予定がずれ込むことも覚悟しておかなくてはならない。 それゆえ、当面は、これまで収集した情報の整理と課題のスクリーニングおよび比較分析、在京で手に入る文献・資料の収集と渉猟が主たる研究作業になる。そして状況を見ながら、直接現地に入っての調査、資料収集を行っていくことになるだろう。 以上のことをふまえると、当初の研究計画におけるスケジュールとはずれや変更が生じてくる可能性があり、それらの再設定(調整)が今年度中のもうひとつの課題となる。
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