研究実績の概要 |
2016年4月に発災した熊本地震から約6年が経過し、熊本県内の応急仮設住宅で生活を送る被災者は、20,255世帯・47,800人(2017年5月時点)から37世帯・95人(2022年3月末時点)にまで減少した。震災後、県内18市町村に開設された地域支え合いセンターは、現在も応急仮設住宅が残っている2町村で、支援活動を継続している。 本年度は、応急仮設住宅の入居者や在宅被災者への相談支援や見守りなどを担う、地域支え合いセンターの生活支援相談員(支援員)による被災者支援に関する研究をまとめた。災害時の農山村地域において、仮設生活期に被災者を手厚く支援するには、地域住民をパラプロフェッショナル(専門職ではない訓練された働き手)として雇用し、職住隣接にもとづく支援を行う必要がある。職住隣接の実践知に裏づけられた再帰的な支援は、支援員自身の地域生活にも影響を与え、日常の地域参加が深まることによって、職務に対する満足感にもつながっていた。このような支援員の実践は、社会的ケアの職住分離規範と異なることから生ずる負の側面を抑制し、公私の連続性を生かした災害ソーシャルワークとして、農山村地域の被災地で重要な役割を果たしていた。
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