兵士は戦地で死をどう受け入れたのか。戦後にその記憶をどう抱いたのか。本研究は、生を基点に死を捉える社会学と死を基点に生を捉える宗教学の視座を重ね合わせ、アジア太平洋戦争に関わる兵士の精神構造の動態(生と死の葛藤と死への収斂)を描き出す。 分担者西村は、2020年度で予定通り調査を終えた。調査が延びた代表者青木は、過去2年間、コロナ禍のため遠方での資料収集ができず、その状況は2022年度も変らなかった。同年度の青木の研究活動は、次の通りである。一つ、広島県三原市の人権文化センターにおいて部落解放同盟広島県連合会・歴史社会構造部会に参加し、近代・戦争・部落差別をめぐる研究報告を聞き、本研究の関連情報を収集した(4月、5月、 8月、10月、2023年2月)。合わせて被差別部落民の戦争体験を聞き取った。二つ、社会理論・動態研究所主催の生と死研究会において「戦争・死・記憶」について議論し、本研究の中身の整理と理論的考察を行った(7月、9月、Zoom)。三つ、広島県福山市内の戦跡及び戦没者慰霊碑を訪ね、関連情報を収集した(4月)。同市内で催された元部落解放同盟書記長の小森龍邦氏の葬儀に出席し、参列者より同氏と参列者の戦争体験を聞き取った(5月)。同市内のホロ・コースト記念館を訪ね、展示物を閲覧し、職員に面接して、日本とドイツの戦争観の共通・差異について話を聞いた(5月、7月)。四つ、日本戦没学生記念会主催の「不戦のつどい」において政治学者の浅井基文さんの講演を聞き、関連情報を収集した(12月、Zoom)。青木は日本戦没学生記念会の会員であり、年度を通じて交流した。五つ、本研究の成果である青木・西村の論文(『理論と動態』14号の「戦争特集」)の書評会において、さらなる情報収集と理論的考察を行った(2022年3月)。 こうしてコロナ禍の中、本研究は、2022年度に一応の完了をみた。
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