研究課題/領域番号 |
18K01990
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永井 彰 東北大学, 文学研究科, 教授 (90207960)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域ケア / 地域生活支援 / 被災者支援 / 生活支援コーディネーター / 地域社会学 / 地域福祉 / コミュニティソーシャルワーカー / 地域自治 |
研究実績の概要 |
本研究は、東日本大震災被災地における地域ケア・システムの構築の現状と課題について明らかにすることを目的とする。2019年度においては、宮城県石巻市、東松島市、南三陸町において地域ケア・システムの構築の現状について調査研究した。また宮城県仙台市、岩手県大船渡市、福島県相馬市において、地域ケア・システムの構築の現状について関連資料を収集した。さらに、大規模災害と地域ケア・システム構築との関連を探るために、阪神・淡路大震災被災地および熊本地震被災地において関係者への聞き取りや関連資料の収集を継続しておこなった。本年度は、宮城県本吉郡南三陸町について事例分析をおこない、その結果を論文として公刊した。 南三陸町においては、東日本大震災直後から開始された被災者生活支援を起点として、地域ケア・システムの構築へと向かった。南三陸町では、大量の仮設住宅を必要としたうえに、多くの仮設住宅団地は抽選入居となったため、地域見守りが重要な課題となった。南三陸町では、被災者生活支援センターを立ち上げ、地域住民を巡回型生活支援員として雇用し(最大時132名)、見守りや相談などの業務を実施した。この業務は、被災者の個別支援であると同時に地域づくりの支援であった。その後住宅再建が進み、災害公営住宅団地や集団移転地へと生活の場が移ったが、地域見守りの必要性は残された。そこで南三陸町では、団地の集会所にLSAを常駐させた。また2018年4月には拠点施設「結の里」を開所させた。これは、LSAの詰め所であると同時に、生活支援コーディネーターも配置された。このLSAと生活支援コーディネーターは、もともと被災者生活支援センターの生活支援員だった人である。現在の南三陸町では、被災者生活支援のなかで育った人を高齢者の地域生活支援に活用することによって、地域福祉に軸足を置いた地域ケア・システムが形成されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災被災地のうち、宮城県本吉郡南三陸町について事例分析をおこなった。また宮城県仙台市、石巻市、東松島市についても調査データが蓄積されてきた。また東日本大震災被災地との比較のために資料収集を実施している、阪神・淡路大震災被災地や熊本地震被災地についても、データが蓄積されてきた。これら蓄積されたデータにより、東日本大震災被災地の地域ケア・システムの展開過程について分析を深める準備がおおよそ整った。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災被災地のうち、宮城県仙台市、石巻市、東松島市、南三陸町について現地調査および資料収集を続けるとともに、それ以外の自治体についても現地調査および資料収集をおこなう。また東日本大震災被災地における地域ケア・システム構築研究の参考にするために、東日本大震災以外の被災地(阪神・淡路大震災、中越地震、熊本地震)についても資料収集をおこなう。また東日本大震災被災地における地域ケア・システム構築研究の参考にするために、特徴ある地域福祉実践や地域ケアの取り組みについての資料収集をおこなう。 ただし、2020年4月時点においては新型コロナウイルス感染症の感染拡大が進んでおり、今年度現地調査がどの程度実施できるか不確定である。本研究では、聞き取り対象のなかに行政機関、医療機関、福祉施設などの含めているが、これらにたいする聞き取りができない可能性がある。その場合は、聞き取り対象を限定せざるを得ないし、文献収集を主眼とした調査になる可能性がある。その場合、今年度新たに収集できるデータは限定されることになるが、すでに蓄積したデータがあるので、そうしたデータの分析をおこなうことで、研究成果をまとめることにする。
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