研究課題/領域番号 |
18K01994
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
中澤 高師 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50723433)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 原子力発電所 / 再稼働 / 地元合意 / 住民意識 / 質問紙調査 |
研究実績の概要 |
2011年の東京電力福島第一原発事故後の原発再稼働をめぐっては,その是非について様々な議論が展開されている。その一方で,了解すべき地元の適切な範囲や,何をもって合意とするのかが重大な問題となっている そこで、2020年度に静岡県、宮城県、茨城県、新潟県を対象に実施した、原発再稼働と地元合意に関する住民意識のネットモニタ質問紙調査の結果の分析を進めた。因子分析、及び因子得点を目的変数とした重回帰分析の結果、地元合意のあり方への態度には、再稼働や県民投票への賛否だけでなく、年齢や性別によっても有意差があることが明らかになった。また、他の地域に比べて、新潟県は「原発再稼働の受益者」の意見を地元合意過程において尊重することに否定的な傾向が見られた。一方、「立地自治体」、「隣接自治体」、「その他UPZ圏内」、「その他県内」といった各原発立地県における居住地域は、他の変数が統制されたときには、地元合意のあり方への態度への影響はほとんど見られなかった。 さらに、上の結果を他の原発立地自治体でも検証するため、青森県、石川県、島根県、北海道を対象とした追加調査を実施した。 公正で社会的に受容可能な地元合意のあり方を模索するためには、原発がもたらす環境影響や社会経済的影響についての多角的な検証に基づき,そのプロセスをデザインする必要がある。地元合意のあり方への住民態度を明らかにすることは、そのための一助となるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の調査結果の分析に加え、他地域における追加調査を実施した。 一方、浜岡原子力発電所と佐倉地区対策協議会に関しては、新型コロナ禍で現地調査の実施が困難であったことから、文献資料調査のみにとどまった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、2021年度実施のネットモニタ質問紙調査の結果分析と、佐倉地区対策協議会の研究を中心に、原発再稼働と地元合意の研究を進めていく。 2021年度のネットモニタ質問紙調査は、2020年度調査と比較可能な形で実施している。8地域の結果を比較分析することで、共通性と相違性を見出していく。 佐倉地区対策協議会の調査は引き続き文献資料調査を中心に進め、新型コロナの状況を見ながら現地調査を実施する。 また、これまで原発を対象として検討・実施された住民投票について、文献資料調査を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍による移動制限により、静岡県御前崎市における現地調査を実施することができなかった。また、国際学会がオンラインになったことで、旅費が計画通り使用されなかったために、次年度使用額が生じた。 2022年度も国際学会等が現地開催されるかどうかは不透明であるため、主に文献資料の購入、ジャーナル投稿のための英文校正・投稿料、データ分析に必要なコンピュータ関連機器などに使用する計画である。
|